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感想 chappy solo exhibition “ BEYOND THE SCRATCH ”

chappy  solo exhibition

“ BEYOND THE SCRATCH ”

 

会 期:2021年11月6日(土) - 11月21日(日)

時 間:平日 16時-22時 土日 13時-19時

休 廊:木

場 所:亀戸アートセンター (KAC)

展覧会URL:

https://kac.amebaownd.com/posts/22474128?categoryIds=1764028

 

 

 


 

亀戸アートセンターのオーナーでもある石部 奈々美さん(a.k.a. chappy)の個展を観に行きました。

 

展覧会タイトル“ BEYOND THE SCRATCH ”から、主に「引っ掻いて」制作していらっしゃるのかと思いましたが、scratch(スクラッチ)という単語には多様な意味があると教えていただきました。もちろん、「引っ掻く」という意味もありますが、DJがレコードをスクラッチする、と言う場合のように、上下左右に手などを動かす動作全般を指します。

 

以下プレスリリースからの抜粋ですが、chappyさんは作品制作において「描く」「削る」「消す」「磨く」ということをスクラッチという動作を用いて行っています。

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作家は、体の動きをストロークに反映させ線を描き、削り、消し、磨き、またその上から描くという行為を繰り返しながら作品を制作しています。

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1階部分







 

驚いたのは表面がつやつやと輝く作品があったことです。スクラッチという言葉からは想像していなかった「磨く」という作業が、石のような鈍い光沢を与えています。

 


 

作品は紙に描かれており、厚みは1mmほどです。ブロンズ像のような佇まいであるのがなんとも不思議でした。

 

動きを感じられる迷いのないストロークから、紙を立てて描いているのかと想像しましたが、chappyさんは平置きの紙にベストな重さをかけて制作すると言います。描く速度(「時間」)、削る、消す、重ねるなどの層(「物質」)に加えて、「重さ」も必要な要素であるようです。

 

書く文字の筆圧が人によって違うことには敏感でしたが、アーティストの筆圧に関してはそれほど意識していませんでした。

濃く書いてしまった鉛筆の線は消しても跡が残ります。無理に消そうとして、わら半紙が毛羽立ってしまった小学生の頃のことが思い出されます。

 

chappyさん作品の余白は後から消して作るのだそうです。余白の中にも歴史のように色や線を見ることができます。ロフトの展示作品は、この消すという作業がより感じられるものになっていました。

 

ロフト部分






格子状に消された線に現れる下層の線。chappyさんは線を描いていると言います。

身体を使い心地よい感覚を頼りに描き始め、仕上がりは意識的に締めくくる。まるで陶芸家が、焼くというコントロールできない制作工程の後に、仕上がった作品を選別していくかのようです。

 

ダイナミックなストロークとは裏腹に、作品にわび・さびを感じるのはそのような理由からかもしれません。

 

 

今回、スクラッチの意味を改めて調べてみると「十分に良い」というものがありました。

線を描くことを追求し、もう十分、と満足することなく挑戦し続けるchappyさんの作品を、ぜひ実際に観に行ってみてください。

 

展示風景画像:chappy  solo exhibition “ BEYOND THE SCRATCH ”


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