武居功一郎 個展「column」
会 期:2021年11月13日(土) - 12月5日(日)
時 間:13時-19時
休 廊:月火
場 所:TAKU SOMETANI GALLERY
展覧会URL:
NFT、話題ですね(2021年11月現在、日本)。簡単に説明しますと、Non-Fungible Tokenの略称で、ブロックチェーン技術を用いることによって、今まで複製や偽造が容易であったデジタルデータを唯一無二のものにすること、を可能にしました。また、過去の所有者の履歴も残せます。
Fungible は代替可能という意味で、紙幣とか、大量生産された商品などはこれに当てはまります。店頭に並んでいる商品としてのぬいぐるみは Fungible ですが、子供の頃から一緒に過ごして思い出がいっぱい詰まったぬいぐるみは、たとえ新品が売っていたとしても替え難い、Non-Fungible に該当します。
アートを販売するにはもってこいの技術です。複製が容易なデジタル作品の価値の保証が可能になりますし、データではない作品についても、NFTなら所有者の履歴が残るため、保証書などを紐づけることによって悪質な転売を防ぐことに繋がります。ただ、今現在NFTアートは金融商品の如く短期的な売買で値がつり上がって、誰かが最後にババをひくマネーゲームのように取り沙汰されているので残念に思いますが。
武居功一郎さんは2000年の初頭からデジタル作品に取り組んでいらっしゃる作家です。
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画像が粗い?わけではないとわかると思います。単に画像が粗い場合は正方形のモザイクになりますが、これらは横に長い長方形で描かれたデジタル作品です。何かのプログラムを組んで一斉に変換しているのでもありません。写真画像をもとにして描画ツールで長方形を無数に描いています。面白いのはこれらの粗い情報でも、何となく元の画像が文庫本だったり、漫画のコマ割りだったり、五線譜だったりするのが予想できることです。
そこでふと、写生ということはどういうことだろうと改めて考えました。描きたい対象物の色彩を認識し、画面に同じ(と感じられる)色を塗る。物質は目に見えないほどの小さな粒子で構成されているわけですから、点描で細かく描いたとしても、認識して写しとる色の一区画は粗くなります。ですが、優れた写生は実物よりも人を惹きつけることがあります。展示タイトル「column」やアーティストステートメントにもあるように、視覚情報は大脳皮質にある柱状の機能が反応して各特徴を処理しているそうです。この処理機能が各個人の性質や状態によってバグを起こし、一部分の情報が増幅または減衰して認識される。それを写し取った作品を鑑賞する別の人間の視覚処理機能が認識して、と連鎖していく。人によって感じ方が違うというバグは当たり前のように私たちに受け入れられています。人間とAIの違い、感動できるかできないかはこのバグの有無が大きく関係しているのかもしれません。
武居さんの作品はデジタルではありますが、人の手で描画することによって、プログラムによる一斉変換では生じないバグを作品に取り込んでいると言えます。
中央に展示されたトランプの作品。こちらも一つ一つのスート(ハートやスペードなどのマーク)や数字をコピー&ペーストせずに、描いているそうです。
確かに、微妙に違っている、、、!
元の写真画像の光源なども関わってくるこのトランプは、スートや数字を画一的に印刷した製品とは全く違うと言えます。4×13=52枚+ジョーカー、気の遠くなる作業ですね。
デジタル作品でありながらどことなく柔らかい感じを受けるのは、輪郭がぼやけているからという理由だけではないのでしょう。
「Play-1」
部分拡大
このトランプが宙に舞う映像作品もあります。シュールな背景は6種類。気がつくと背景ばかり見てしまうんですよね、不思議です。
今回の展示ではプリントアウトされた紙の作品とNFTのデータ作品が、同じ値段で販売されています。長くデジタル作品に取り組んできた作家の、NFTアートへの実験的な試みをぜひ目撃しに行ってください。
展示風景画像:武居功一郎 個展「column」
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