オザキエミ 個展 「STAY HERE」
会 期:2021年12月3日(金) - 12月16日(木)
時 間:9時-21時
場 所:slash kawasaki
展覧会URL:https://www.instagram.com/p/CWe2RgPPsyg/
オザキエミさんは1991年生まれ、広島県出身。東京を拠点に活動するイラストレーター、アーティストです。広告や雑誌、商品デザイン、企業やブランドとのコラボレーションなど幅広く活躍されています。今回、川崎に2019年にOPENしたシティホテル slash kawasaki 1階のカフェスペースにて、描き下ろしたキャンバス作品が展示されるとの情報がありましたので観に行ってきました。
※作品鑑賞は、宿泊なし、カフェの注文なし、で可能です。入場無料。
本展のDMはホテルのドアプレート風。かわいい。この他、ホテルのキーチェーン風のグッズもあり、これらはオザキさん自らプロデュース。アートディレクター志望だったというオザキさん。ホテルという展示スペースに合わせた見せ方はさすがです。
「某ホテルより、愛を込めて。」
入ってすぐ、ホテルを題材にした漫画が描かれた作品が展示されています。作品のピンクとブルーがスタイリッシュなホテルのエントランスを演出。こちらのストーリーもオザキさん作のオリジナル。
画像、一部光ってしまいセリフが見えづらいですがご容赦ください。気になる方は現地へ。
作品のすぐ横のプロフィール。色が統一されています。
「WOLF CUT」
展示会場は1階。フロント横にも作品。
エントランス以外はコンクリートの壁です。
本展のキャンバス作品は、通常よく目にするキャンバスよりも厚めのものが使用されています。厚みを活かして側面や底面にタイトルが描かれている作品も。
こちらの作品「WOLF CUT」は左→上→右と通話のセリフが繋がっています。
「A NEW JOURNEY」
ドアプレートのDMと同じモチーフの作品。こちらはフルカラー。印象がまた違います。ホテルのゆったりしたベッドでカウチポテトの様子でしょうか。会場のホテル slashさんの全客室にはプロジェクターが設置されており、手持ちのiPhoneなどから動画コンテンツを投影して楽しめるそうです。
「BROKEN TV」
映画からインスピレーションを受けることが多かったというオザキさん。何か画面から飛び出しているこちらの作品はインスピレーションが溢れ出ているのでしょうか? サボテンが持つコーヒーと吸ってるシガレットも映画を連想させます。
「MY BEST FRIEND」
半目のような、しれっとした目がオザキさんの描く顔の魅力です。
去る者追わずのようなさらりとした関係が理想、というオザキさん。相手のことも自分のことも考えれば、それがベストなのかもしれません。明るい色調ながらも落ち着いた大人な雰囲気が感じられます。
「STAY HERE, MY KITTY」
友人から「ホラー映画っぽい」と評されたというポスターのような作品。確かに足の数が、、、?
字体を考えるのもお好きなんだそう。
「FAR AWAYS」
ファンキーな色の鳥。「KEEP COOL」「TAKE A BREAK」とハートを手懐けてますね。大人だ。シガレット率多し。
今回私が特に惹かれたのはこちらの2作品です。
左:「SWEET EATER」 右:「CALMSPOT」
土曜の夜に、スタイリッシュなカフェ&バーにおじゃましたものですから、お食事を楽しんでおられる方も多く全景を写せず残念です、、、。カフェの一番大きいコーナーソファの上に展示されておりまして、深いブルーグリーンのソファと色も合っていてすごくかっこいい。作品なしの店内の様子は「slash kawasaki cafe」で画像検索すると確認できると思いますが、作品があった方が明らかに良いです。作品、ソファ、コンクリート壁、揃いで手に入れたい、、、!
カフェやその他、ギャラリーではない店舗での展覧会の良いところはインテリアと組み合わせて鑑賞できるところですね。没入できる白い壁の展示も良いですが、アート作品を買って飾ることを考えると、こういう場所での展示はとても参考になります。
すぐ横にはテラス席。食事を楽しんでいる方のそばに近づいて撮影。じっくり鑑賞しづらいのは仕方なし。
オザキさんが在廊されており、展示を目当てに来たというのを察知していただいたのか、ご本人から話しかけてくださいました。お食事時におじゃましてしまったにもかかわらず、いろいろとお話しいただけました。
2021年は展示が3つもあったというオザキさん。売れっ子さんです。ですが、多忙の弊害と言いますか、作品制作に必要なインプットが思うようにできなかったそうです。本展は今年最後の展示となり、キャンバスの作品を制作してみて、フルカラーの面白さを再確認され、エントランスにあった漫画作品のようなコマ割りのカラー作品にも意欲があるとのこと。
オザキさんはApple PodcastsのILLUSTRATORS SPEAK(2021年7月公開)の番組内で、イラストレーションのお仕事について、自身の絵の特徴はそのままとして、その他の部分はクライアントさんの希望に合わせて比較的自由に融通をきかせて描けるとおっしゃっていました。
また OUWNさんのインタビューでも
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「仕事」だからこそ自分だけで考えたのでは描かないもの、思いつかないものでも『相手』とやりとりしていく中で生まれてくることがあって。
それがすごく面白くて楽しいです。そんな出会いと発見のあるイラストレーションの仕事って素敵だなと思っています。
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と話されています。
相手とのやりとりから新たに生まれるものに前向きでおられるオザキさんは、とてもコミュニケーション能力が高い方と感じました。
アートとイラストレーションの違いということかもしれませんが、アートもコミッションワークというものがありますし、融通がきく範囲は作家それぞれと思います。オザキさんの場合、作品制作においては、どこにでもあるような絵に見えてしまいそう、という理由で「鼻は描かない」という決め事があったそうなのですが、文脈上納得できれば描くこともあったそうです。融通がきく、けれど先方が求めるものに納得した上で自身の特徴も出していけるというところに、コミュニケーション能力の高さを感じます。
コミュニケーションは、相手からの視点の理解が重要です。相手の考えや求めるものを正確に理解できていないまま交流が進めばすれ違いが生じます。オザキさんは、作品のキャラクターのクールな表情と同様、一歩引いた状態で自分の作品を見ることに長けているのではないでしょうか。自分のした仕事の客観視というのはどの分野でも難しいことです。力を入れたものほど主観が入りがちになります。クリエイティブな分野だと数値化できる基準もないためより困難なことと思います。これは、アートディレクター志望だったというオザキさんの経歴も大きく関係しているのかもしれません。
もともとは描く顔に口がなかったのが必然的に現れた、と前述のPodcastでは話されています。変化はすでに始まっているのかもしれません。
オザキさんの来年の抱負として、映画鑑賞などのインプットの時間を取りたいというのと、その結果として自身の特徴をより打ち出していく表現にも目を向けていきたいということをおっしゃっていました。オザキさんの作品が今後どのように進化していくのか、本展が、新たな表現のきっかけの展示と位置付けられるかもしれません。空間も合わせてぜひ味わってみてください。
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編集後記
オザキさんご本人が記事を読んでくださり、私が惹かれた2作品の画像を送っていただきました。
私の画像は18時ごろ、こちらの画像は日がある時間帯ですので、また見え方が変わって素敵です!
これで、私の記事にも説得力がっ☆
オザキエミさん、本当にありがとうございます!
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