寺本愛 個展「living」
会 期:2021年12月4日(土) - 12月19日(日)
時 間:13時-18時(最終日17時終了)
休 廊:月火水木
場 所:海老原商店
展覧会URL:
https://www.instagram.com/p/CW43opZLXhb/
「瞳が3つある」と、描かれた人物を表現する方もいます。明らかに異質な瞳の、時に別の生命体を思わせる描写でありながら、いかにも人間らしい所作や佇まいに親近感を覚える、というのが寺本愛さんの作品に対する私の感想です。
深く印象に残る目と様々な時代のファッションスタイルを描く寺本愛さんは、1990年東京生まれ、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。「Timeless Fashion」というテーマのもと、様々な地域・服飾文化に暮らす人々に自身の記憶や体験やフィクションを重ね合わせた人物画を多く発表されています。
けものさんのLPレコードジャケットで寺本さんの作品を拝見してから、寺本さんが描く瞳の印象がずっと脳裏に残っていました。2021年10月のVINYL GALLERYでの個展「PROMENADE」から、日を経ずして開催された本展にさっそく伺ってきました。
会場である海老原商店は、1887年(明治20年)に古着屋として創業され、関東大震災後の1928年に現在の建物が再建されました。当時の店主・海老原保蔵さんと親交のあった画家との二人三脚で、試行錯誤の末、看板建築様式を採用したファサード(建物正面)のデザインが制作されるなど、看板建築の中でも和洋を取り入れた建物で、2003年に千代田区景観まちづくり重要物件に指定されています。ファッションやアートとの繋がりを感じさせる海老原商店は寺本さんの作品にぴったりで、「NPO 都市住宅とまちづくり研究会」の副理事長であり一級建築士の島田信弘さんのお声がけから今回の展示が実現しました。
入口。日が落ちた夕刻に伺ったので、画像が暗く感じられると思いますが、落ち着いた照明も合わせて雰囲気を感じ取っていただけると幸いです。
10月の個展「PROMENADE」で発表された初のフィギュアも展示されていました。時を経た、重厚な色合いの机の上にも、モダンな日本人形のような佇まいでとても合います。
『COLLECTION』は、寺本さんが2015年から毎号テーマを設けて描き下ろしている冊子シリーズです。
Pilgrims(巡礼者)をテーマにした#2など、寺本さんを深く知る手引きになるグッズも並びます。
さっそく展示を拝見。
「Face」
「Two Seas」
階段を上がって2階のメイン展示へ。
どーん。という効果音が脳内に響くような眺め。奥の、通りに面した窓がある部屋に向かって続く展示会場。襖の模様とリンクしている衝立ての作品が主人のように迎えてくれます。
「Mayumi & Rhapis humilis [棕櫚竹]」
ようこそ。
衝立ての裏にも作品が。
「Winter berries」
「Inculturation #2」
海老原商店さんには『図説大聖書』という書籍や「耶蘇(イエス)聖母ニ逢ヒ給フ」と題された絵画があり、聖母子像を連想させるこの作品はそれらとリンクしています。
タイトルの Inculturation は文化受容と訳され、主にキリスト教において使用される言葉です。海老原商店の和洋折衷の歴史を象徴するようです。
次の間へ。
「Mari #2」
「Mayumi #1」
「Mari #1」
「Mari & Mayumi」
ここに住んでいらした方が、当時の思い出と共に蘇ったような印象を受けます。
おや、線が、、、?
部分的に赤いですね。
他の作品ももう一度見てみると、、、
腕の内側の一部など、赤い線が見えます。
衝立ての作品も、鼻筋や目の線の一部などが赤いです。
赤い線のせいでしょうか。輪郭が少しだけぼやけて感じます。ひょっとして、異世界に入りこんでます? (ナンダカドキドキシテキタヨ)
第3の間へ。
鏡に映る作品たち(ドキドキドキドキ)
「Tulip」
左:「Look at me, Mari」
右:「Look at me, Mayumi」
「Look at me, Mari」
「Look at me, Mayumi」
ここに居たMariさんとMayumiさんに、寺本さんが話しかけたのでしょうか?
「She doesn't cry (anymore)」
1階の作品「Face」では、汗や涙のように見えていたパールが、この「She doesn't cry (anymore)」では女性の髪を美しく飾るのみになっています。
海老原商店を介してMariさんとMayumiさんという2人の生き様に触れた女性が、強く生まれ変わる、そんなストーリーも想像できました。
窓辺には寺本さんの『COLLECTION』や看板建築の資料など。
『COLLECTION』では、時代や地域を超えて、そこに住まう人々の装束を細かく描写する寺本さんのライフワークが窺えます。
本展も、代々の家族写真や資料を読み込むことで受け取った海老原家の歴史を、自身の記憶と混ぜ合わせながら人物や情景を作り上げている、とのこと。
途中ドキドキしてしまいましたが、とても愛に溢れた展示でした。
2階の展示から戻る際には、衝立ての裏のこの作品が見送ってくれます。
ウィンターベリーは西洋ウメモドキ。
ウィンターベリーの花言葉は「永遠の輝き」、ウメモドキの花言葉は「知恵」「明朗」「深い愛情」。
海老原商店の歴史ある重厚な趣きと、異世界を感じさせながらも、今を生きている私たちを反映する寺本さんの作品の見事な組み合わせを、ぜひ体感していただきたいと思います。
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