片岡メリヤス 10周年記念展
「メリヤスの人形の家」
会 期:2021年12月11日(土) - 2022年3月31日(木)
時 間:9:30-17:00 (最終入館受付16:30)
休 廊:月 (1/10は開館、1/11は振替休館)、年末年始(12/29 - 1/3)
場 所:横浜人形の家
観覧料:大人(高校生以上)600円/小中学生300円
展覧会URL:
片岡メリヤスさんがぬいぐるみを中心とした創作活動を開始して2021年で10周年。記念の展覧会が横浜人形の家にて開催されています。
個人的に初めて「ぬいぐるみ」のアート作品というものに遭遇したのはマイク・ケリーの作品と思いますが、観せ方、見た目等もあって、鑑賞する側もアートとして強く認識していたように思います。
一方、片岡メリヤスさんが作るぬいぐるみは、大きさ、もふもふ感が正にぬいぐるみ然としています。それでいて、作品を特徴づける可愛い表情とは裏腹に、人体解剖をテーマとしたり、「運び屋」などダークなキャラクターがいたり。
マイク・ケリーのぬいぐるみ作品が、誰かの手によりつくられた「可愛いもの」を出発点に、汚れや縫い合わせなどである種の「おぞましさ」を感じさせるよう意図されたものであるならば、片岡さんはぬいぐるみを元の文脈に戻し、本来はおぞましかったり凶暴だったりするものを可愛いものに変換することで、観る者に親しみやすさを感じさせ、距離を縮めて対話を可能にしたり、違う観点から捉える役割を持たせていると言えるかもしれません。ぬいぐるみの定番の熊などは、たとえ子熊だとしても本物なら幼児に抱かせて寝かせるなどあり得ないですが、ぬいぐるみの熊さんとならいっしょに寝たりしゃべったことあるよって人、多いのでは?
本展では、横浜人形の家に所蔵されている民族人形や民芸品、ビスクドールや土人形等と、それらを片岡さんがぬいぐるみに変身させたものが並んで展示されています。こう言っては失礼かもしれませんが、もともと所蔵されているほうの人形は見た目がちょっと怖いものも多く、人を形取るなんて何かしらの呪いがかかっているに違いない、、、! などと勝手な妄想を抱いてしまいそうなのですが、片岡さんのぬいぐるみが隣にあることによって、人形たちが主張する術を与えられ、私たちに親しみやすく語りかけてくるような展覧会でした。
「隠者」
「内なる自分を見つめている。心を静かに自然と調和する気持ちを忘れない。フードを脱がされると急に陽気なおっさんになる。」
最初の1体目からこのキャプション笑。フードにどんな秘密が、、、? いや、服装でその気になっちゃうことはあるあるかも。
「パンクピエロ」
「パンクバンドをやっているフリをしながら実はフォークギター初心者のピエロ。音楽が好きでレコードを集めたい」
そうだったんだ、フォークなんだ、、、。その格好は理想なのかな?
「ぶんぶく茶釜くん」
「昔話に憧れて茶釜に変身しようとしたが妖力が弱かったために変身出来ず、茶釜を背負って変身したフリをしている。今どきのたぬき。」
憧れるポイントが人間臭い。
「はらまきキツネくん」
「お腹が冷えるため夏場でもはらまきが手放せない。お腹の調子が良い時が少なく、外出する時はトイレの場所のチェックを欠かさない。」
HSPなのかな、、、。繊細だね。
「古典狐」
「伝統と文化を盾に現状維持以上のことには異常に消極的。実はグータラしたいだけで、なるべく何もやりたくないし毎日休みたい。」
こちらも人間味溢れてますね。私もグータラしたいです。
この調子ですべてにキャプションがついております。面白く、時に背景にあるストーリーを想像してしまい、つい、全部を画像に収めて巡ってしまいました。これを考えつく片岡さん、すごいです。
全ての詳細を載せたいところですけど、これは観に行った人の特権にしたいですね。
「初代ポチ」
初代は君か、、、。
「ピエロやめたい」
ピエロをやめたいのかぁ。さっきのパンクピエロもそうだけど、容易に心を悟らせないのがピエロの特徴か。
「バッテンでしょ」
いや、違うでしょ。扇風機でしょwww。やや自虐的で可愛い。
えー、収めきれない、というのがお分かりいただけたと思います。見応え十分です。
そして、ぬいぐるみ専用のフォトスポットも!
自分のお気に入りのぬいぐるみをぜひ持参しましょう。
そして会場にある小劇場のカーテンがおもむろに動き出して、、、
「また会いましょう!」
はい。また来ます。
実際、何度来館しても楽しめるイベントが用意されており、
季節ならではのぬいぐるみ展示や、
お正月の時期はだるまです。
1月中旬には本展オリジナル作品集の発売、また、オリジナル作品集サイン会、オリジナル缶バッジづくり、写真くじ、ファンタジー人形劇などが予定されています (詳しくは公式ページをご確認ください) 。
作品は抽選販売されているものもあり来場者のみが申し込めます。何よりも、各人形、各ぬいぐるみ、各キャプションを何回でもじっくり鑑賞したいです。
片岡さんがなぜぬいぐるみを制作するに至ったのか、ユーモア溢れるキャプションの理由、等が展示前に漫画形式で語られていました。「ごあいさつ」と合わせて読むと、片岡さんのぬいぐるみへの愛がとてもよく伝わってきます。
最後の部分は会場で読んでください。
会場の壁紙まで必見です。
入館は有料ですが見応えがあり、料金以上に堪能できました。ぬいぐるみを通して見えてくる新たな世界を、ぜひ体感してみてください。
展示風景画像:片岡メリヤス 10周年記念展「メリヤスの人形の家」
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