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感想 寺本明志 個展「Patio」

 

寺本明志 個展「Patio」

 

会 期:2022年1月19日(水) - 2022年2月5日(土)

時 間:12:00-19:00

休 廊:日月火

場 所:Bambinart Gallery

展覧会URL:

http://bambinart.jp/exhibitions/20220119_exhibition.html


 

寺本明志さんは、1992年生まれ、多摩美術大学大学院博士課程美術研究科絵画専攻油画研究領域、卒業。福沢一郎が教鞭を執ったことのある多摩美術大学と女子美術大学の優秀な卒業生に、制作活動の援助という意味で贈られる福沢一郎賞を2015年に受賞。2013年3月より相模原に開設したArt space Kaikas’を拠点に、アーティスト主導による企画・制作・展示等の活動をされています。

 

Art space Kaikas’における展示では作品の見せ方も含めた空間としてのインスタレーション要素が色濃く現れていたという寺本さんの作品ですが、本展では「Patio」(中庭) と題し、特徴的に表現されてきた空間や関係性が、ペインティングという形でキャンバス内に収められています。

 



 

中庭という場そのものが感じられる作品、人物に焦点をあてた作品、時間の流れを感じる作品とが交互に展開されていきます。

 

一番初めに気になったのは、グレー調で統一された時間の流れを感じる4つの作品です。

 

 

「Patioー日没ー」

 

「Patioー夜ー」


 

「Patioー夜更けー」

 

「Patioー朝ー」


 

日没から朝までの暗さが表現されています。使い分けられた地の色 (赤、青、緑、橙) で暗さの中にも微かに日の光や月の光が感じられます。

 

 

「Patioー日没ー」

 (部分拡大)

 

「Patioー夜ー」

 (部分拡大)

 

「Patioー夜更けー」

 (部分拡大)

 

「Patioー朝ー」

 (部分拡大)


 

描かれている空間には美術作品が置いてあり、展示室のような雰囲気も感じられます。「夜」と「夜更け」には黒猫のような影も見え、「夜更け」では加えて様子を覗きに来たような人物も見られます。

 

この一連の作品群から「みんなの歌」の『メトロポリタン美術館』を思い出すんですが、怖い曲と感じている人も多いみたいですね (私はそうは思わなかったのですが) 。動画等は貼りませんが、私は子供の頃の想像力を暗喩しているかわいい曲と思っています。大理石の像やミイラと踊って友達になってるの、楽しそうです。

 

誰もいない夜になると美術品が動き出すような、または、夜になると未知の何かが働いて作品が熟成するような、そんな不思議な感覚を覚えます。

 

 

「Patio」

 

「Patioーテントがある広場ー」


 

場を感じさせる2枚は、日中の陽の光に照らされた中庭の様子が見て取れます。作品が制作されているのか、展覧会の前か後かフラッグがあったり、散らかった様子も見られます。明確に人物は描かれていませんが、人の気配というか視線を感じます。

 

 

「Patioー覗く人ー」

 

「Patioー水を留める人ー」


 

「Patioー暖をとる人ー」

 

「Patioー服を着る人ー」


 

「Patioー寝る人ー」

 

「Patioー逃げる人ー」


 

「〇〇する人」としていますが、これは作家本人かと思います。どこかで自身を客観視しているような。季節も冬であったり夏であったり、作品制作と格闘する日々でしょうか?

 

「水を留める人」に現れている黒頭巾風の人物? が気になります。尖った帽子のようなモチーフは「Patio」や「Patioーテントがある広場ー」にも現れています。正解が分からなくても、ずっと観てしまう。三角の形状は寺本さんの以前のインスタレーションにも登場していて、特別な意味があるのかもしれません。

 

 

「無題」

Patioと題されていないこちらも意味があるようでないようで。

客観視していない自画像?


 

「Patioー鳥ー」

中庭にいる鳥。尖った三角の嘴。

 


 

中庭とは、壁や建物に囲まれた屋根のないスペースと解説されています。囲まれていても、天候の影響も受けるし鳥なども入って来ることができます。外部の影響を受けながらも隔離された区切りを思わせ、また幾度も俯瞰してバランスを見る、作家の脳内のような世界です。

 

具象の表現でありながら、見えざる世界を覗くような不思議な世界でした。

 

Patio (中庭) について色々と思いを巡らせましたが、実際の空間をインスタレーションで表現するのではなく、画力によって内包することに成功した展示でした。今後、表現はさらに変わっていくのか、この世界観がさらに研ぎ澄まされていくのか、楽しみです。

 

 

「Patioー視る人ー」

 

 

展示風景画像:寺本明志 個展「Patio」


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