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感想 濱口健 個展「ポスカ、その愛の不透明度 2022」

 

濱口健 個展

「ポスカ、その愛の不透明度 2022」

 

会 期:2022年2月19日(土) - 2022年3月13日(日)

時 間:木金 15時-20時 土日 12時-19時

   (最終日18時終了)

休 廊:月火水

場 所:WISH LESS gallery

展覧会URL:

https://wish-less.com/archives/8699


 

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「どうですか!まるでシルクスクリーンプリントと見紛うほどの、この力強い不透明インクの発色は!これで太字や細字の1本の定価が220円!(太字の定価は275円で極太は550円)」

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上記に引用した「作家の言葉」にあるように、こちらの作品は全て三菱鉛筆のポスカという製品で描かれています。弘法筆を選ばず。描かれているのは様々な面で話題になったちょっと懐かしい有名人や、商品ロゴ、キャラクターなど。それらはA4サイズの画面上でミックステープのように絶妙に組み合わさっています。組み合わせについてはランダムであり、意図的なものはないとのこと。そんな偶然がもたらす作品の中に、「これだー!」と自分の心に響く1点を探し当てるべく、来場者が1枚1枚レコードのように作品ををディグっていきます。

 

濱口健さんは1997年に多摩美術大学日本画専攻を卒業。自身のことを「イラストレーションやりながら美術作家としても、、という、立ち位置のよく分からないエリアにてなんとか生き延びようと活動中の絵描き。」とやや自嘲気味に称されています。ポスカへの偏愛とその描画技術、描かれているモチーフの強烈さもあって十分に個性的で魅力的な作家です。

 

今回、載せるにあたってNGな人物、絵柄もあったりするので、私的検閲済みの画像でのご紹介です。不快に思ったりする方がいないとも限らないので配慮、ということです。「え? なに? 気になる」という方はぜひ現地へ。

 

ちょっとNGなものは絵文字で隠してます。海外の犯罪者が描かれているからね。しかしすごい作品の量です。本展では350枚もの作品が集結。購入するとその場で持ち帰りが可能なので、展示のレイアウトは日々変化しています。町田康さんを描いた作品など、人気のものはすでに売れてしまっているとか。

 

机の上に並んでいる作品はディグれます。


こちらのパッケージに入った作品はポスカではなくアクリル絵具で描かれています。


 

では私的検閲をクリアした、個人的にも「これ!」という作品のご紹介です。何をしたどんな人物か、など、人の一生には暗い面もあれば輝かしい面もあり、短い文章でまとめるのはよくないと思いますので名前の部分にWikipediaのリンクを貼ってます。Wikipediaも有志によるものなので全てが真実とは限りません。興味を持った方は各自でお調べいただけますと幸いです。

 

我が家ではBSの「座頭市」が毎日流れております。勝新太郎さん。「パンツははかないようにするよ」。

 

マーシーの愛称でお馴染み、田代まさしさん。


 

霊能者と言えばこの人、宜保愛子さん。KERRANG! はイギリスのロック専門誌。

占い師と言えばこの人、細木数子さん。ロゴはアルゼンチンのハードロックバンドMephistofelesのアルバムのもののようです。


 

山城新伍さん。

 

羽賀研二さん。


 

川谷拓三さん。

 

横山やすしさん。


 

こちらは武田久美子さん。貝殻の水着はセンセーショナルでした。お気に入りの絵柄のようで、何枚かありました。


ポスカのマットなインクのため、「作家の言葉」にある通り、一見シルクスクリーン版画で制作されたようにも見えますが、同じ図柄のものも1点1点手描きです。確かに、体の陰影表現のところなど違いが見られます。


 

貝殻水着がお気に入りすぎてこんな作品まで (いや、どう見てもイエティだろうよ、、、)。 


この箱は、、、?


良い子は細部まで見ちゃダメよ。

 


柄はともあれ、めちゃめちゃ綺麗に仕上げられたカルトナージュの箱。以前、作品はこちらの箱に入れてギャラリーに送られてきたりしたそうです。宅配便のお兄さんもニヤニヤしてたそうで。大人のオモチャが入ってると勘違いされてそうですね!しかし器用、、、。


 

本展には、WISH LESSのオーナーでありアーティストのロブ・キドニーさんとのコラボ作品もあります。

 


他にも種類あります。濱口さんとロブさんはポスカ大好き同士で意気投合し、今後はANGEL EYESというユニット名で活動を予定しているそうです。

 

こ、これはポスカの「P」!(右下)


 

本展全体を観ると、昭和のスターは本当にやりたい放題だったというか、人間臭かったというか、話題の提供にも事欠かなかったんだなぁと感じます。

 

先日観たYouTubeの岡田斗司夫ゼミにて「ホワイト社会」の到来が予言されていました。ドラマやアニメなどあらゆる表現にはポリティカル・コレクトネス (偏見や差別的な表現の排除) が重視されるようになるということです。前述の「座頭市」など、一昔前の時代劇には必ず「当時の時代背景や原作者・製作者の意図を尊重しオリジナルのまま放送いたします。」というおことわり文が表示されるのを観たことがある人もいるのではないでしょうか。不必要に暴力的だったり、残酷だったり、美男美女しか登場しない、美男美女ほど能力が高い、などの表現は今後排除されていく可能性が高まるということです。少年ジャンプの人気漫画はどうなるのでしょう。そこじゃなくて、もっと伝えたい本題を読み解いて欲しい、、、!

 

ある種のエンターテイメントやゴシップは、タブー視して隠せば隠すほど鑑賞者を幼稚にさせるような気がしてなりません。番組で観たままを真似してしまうのは子供のすることで、教育を通して「やっていいこと、悪いこと」を学んでもらわなければいけないと思うのは私だけでしょうか。

 

体罰当たり前だった昭和の教師は「喧嘩をしたことがない奴ほどおそろしい。普段からナイフ振り回している奴はどこを刺せば相手が死なずに済むか分かってやってる。それを知らない奴は追い詰められて相手を殺してしまう (だからある程度喧嘩しろ)」なんて言っていました。今の価値観で言うとかなり荒っぽい教えですが、まぁ正論かもしれません。お笑いのツッコミ担当がボケ担当をいじるのはボケを面白くさせているからで、それをいじめの手段にしてしまうのは間違いです。そういうことを学ぶには、タブー視して隠すことよりも明らかにしていくほうが良い。そして子供とはいえ、いじめる側は知らずにやってるわけではなくて、いじめるつもりでやっている。身近な大人が当事者の心の問題に向き合うことを放棄して、フワッと実体がない何かのせいにしようとしているんでしょうか。偏見や差別の問題は表現を規制するのではなく、問題だと思うものがあるならば議題にあげていくことのほうが有意義だと思うのですが。炎上じゃなくてね(それが難しいのかな)。

 

濱口さんの展示では何かが示唆されているわけではありません。ステートメントで語られているのは「ポスカ大好き!」ということだけです。それでも、描かれた人物の背景など興味が湧いて訊いたり調べたりするきっかけになり、とても勉強になりました。まず興味が持てること。メインでないサブカルチャーの意義というか、アートができることというか、教育とはこういうことからのほうが素直に受け入れられるんだよなぁ、と気付かされました。

 

どんなに漂白しようとも人間である以上、欲はなくせないし、汚い部分も持っています。過去に人間が起こした事実を知ることで、加害者にも被害者にもならないよう振る舞うこともできると思うのです。

 

本展の作品の第一印象は色合いからテクノかなと思っていましたが、じっくり観ていくうちにハードコアが聴こえてきました。

 


違う年代の方と鑑賞するのも面白い展覧会です。ネットでは紹介できない作品があるという意味でも、ぜひ、足を運んでみてください。

 

 

展示風景画像:濱口健 個展「ポスカ、その愛の不透明度 2022」


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