キンマキ 個展「message」
会 期:2022年4月30日(土) - 2022年6月5日(日)
(土日のみ開廊、5月21日、22日は休廊)
時 間:11時-17時
休 廊:月-金、5月21日、22日
場 所:Open Letter
入場料:500円(近隣の方、高校生以下は無料)
展覧会URL:https://www.instagram.com/p/CczoZ7XpL50/
SNSで発見した付箋を描いた絵がとても気になって、キンマキさんの個展「message」に行ってきました。
「husen (post-it) virtual」
「bonsai3 no.1 no.2 no.3 no.4」
「husen (post-it) virtual''」
「bonsai3 no.1 no.2 no.3 no.4」
いいなぁ。魅力的なペインティングに突如現れる付箋部分。付箋ののっぺりとした質感や鮮やかな色のためか、そこだけ異次元のような感じさえ受けます。質感の描き分け、すごい。自然と「絵の中の絵」という見方をしてしまうので、付箋に描かれた落書きのような顔も「絵」である、と示唆されるようです。
上記の「husen (post-it) virtual」や「bonsai3 no.1 no.2 no.3 no.4」は、2018、2017年と以前の作品で複数のシリーズになっているためnot for saleだったのですが、拝見できてよかった。
本展では、付箋からさらに発展して、家族等が書いた手書きのメモを絵画のフォーマットに還元した最新のシリーズ「message」が展開されていました。
「message -in the forest- 」
この作品の混沌とした雰囲気、迷子になった感じ、好きです。「脳内の森に紛れ込んで散乱してしまった、忘れないようにしたい物事たち」というイメージを持ちました。ホラーのようでもあり、コメディのようでもある。
「message -in the forest- 」(部分拡大)
いいね!のサムズアップの感じしますね。ジュリーメリノール???
「message -in the forest- 」(部分拡大)
断捨離。私も忘れずに実行したい。何となく、暗号感もある。
メモの字はかなり忠実に再現しているそうです (メモの内容は組み合わせている場合あり)。
「order」
ぐるっと周囲にあるグラデーションや筆の跡が残る画面から、ともすれば抽象っぽさも出そうなのに、ルーズリーフのような紙の感じや実際の「メモ」の感じがすごく伝わる。メモの写実。模写。
「order」(部分拡大)
上部に見える天使のようなものは、家族が使用しているメモに元からあったイラストだそうです。
下部、赤字チェックの掠れまでリアル。
「order」(部分拡大)
ヘビっぽいですが、キンマキさんが幼少時によく描いていたナマズとのこと。髭がある。形の取り方が子供の絵らしくて、かわいい。
「message」
「見・ろ・よ なまずの面」
なんか、かっこいい。ROCKですね。
「message -calendar- 」
1月から12月までの英単語がカタカナで書いてある。ジュライとジュンが入れ違ったので矢印があったり、ローマ字読みなのか「8月 アーガリスト」ってなっていたり。
「message -yellow memo and knife- 」
「message -yellow memo and knife- 」(部分拡大)
ナイフで刺してある。忍者の投げナイフ感。
「message -haka- 」
お墓の位置かな?
「message -egg- 」
「message」
「message」
白い部分は修正液を再現。
左:「message」 右:「order -pre- 」
「message」
「order -pre- 」
「message -charcoal-fu and blue flame- 」
サムズアップ。
「message -pizza order- 」
ピザ注文。忘れないで。天使のようなものがまた現れてる。
「message -yellow-」
サムズアップ。
「message -yellow-」(部分拡大)
ジュリーメリノール、再び。キンマキさんは三重県出身。四日市メリノール学院という学校があるので、メリノールとはそのことなのか?
「untitled」
「order -pre- 」
ナマズと天使、再び。
「message」
母の日のメッセージと思われます。これは、捨てられない気がする。
単純なメモやレシピであっても、例えば亡くなった家族が書いたものであったなら捨てられないでしょう。その人の手による肉筆の温もりを感じるもの、2度と手に入らないものだからです。子供の頃に書いた字、描いた絵なども「もう再現できない」と思えば、やはり貴重なものと認識されるのではないでしょうか? もらって嬉しかったメッセージも、その時の思い出と合わさって貴重なものとなります。
キンマキさんは1995年生まれ、武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻油絵コース修了。2016年より多くのグループ展等で作品を発表されています。
キンマキさんのインスタグラムにて、スナップ写真のような人物画や、クロスした足の作品など魅力的なペインティングを多く拝見することができます。
「untitled」
「WHITE in the life」
展示風景画像:キンマキ 個展「message」
本展でも販売されていた『ツイ』という冊子に掲載のインタビューで、キンマキさんは、影響を受けたアーティストとしてエリザベス・ペイトンの名を挙げていました。ペイトンも90年代には雑誌の切り抜き等から著名人を描いていて、元の写真の著作権についてどう解釈するのか、という話題が挙がったりしています。付箋やメモ、スナップ写真を作品と捉えれば、それを描いているキンマキさんの作品とペイトンの作品は共通するものがあるように思います。
会場には、そんなメモや人物を描いたドローイング作品も豊富に販売されていて、ボックスの中からディグる楽しみもあります。
展示風景画像:キンマキ 個展「message」
ZINE、ステッカーなど。
人は何に価値を見出すのか。メモや付箋と、作家による作品との違いは何か。そんなことを考えさせられる展示でした。
土日のみ、変則的な開廊となっていますが、近隣にはタチアナ焙煎所という美味しいコーヒーが飲める場所もあり、期間中キンマキさんの作品も飾ってあるそうですので、素敵な休日コースとして上北沢を訪れるのもいいですね。
※タチアナ焙煎所さんの営業時間等は事前にインスタグラムで最新情報の確認をおすすめします。作品鑑賞の際もワンオーダーしましょう。
ぜひ、足を運んでみてください。
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