オオタキヨオ 個展「Cubes」
会 期:2022年5月4日(水) - 2022年5月29日(日)
時 間:水-金 12時-19時30分 土日 12時-18時
(最終日17時終了)
休 廊:月火
場 所:Gallery TK2
展覧会URL:
オオタキヨオさんは京都大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院工学系研究科技術経営コース修了。3DCG上で立体作品を「彫刻」し、3Dプリンターを使って実体化するとという工程で作品を制作しています。
ブレイク前夜#305 のインタビューで「構造の美しさが端的に表れているのがキューブの形だと思う」「キューブって空間にみっちり敷き詰められる最小単位」「逆に言うとキューブだけで世界を作れる」と発言されているように、オオタさんの作品は、キューブを積み上げたり組み合わせることで様々な形へと形成されています。
左:「Boundary 9 tri S R Black」 右:「Boundary 10 tri S L Aluminum」
前述の、ブレイク前夜#305 は会場でも視聴でき、「伸びる影まで計算し」というナレーションが聞こえたので慌てて影も撮影した(汗)、という経緯。この2作品は、作品そのものだけ見ると対称の形の同じような作品と思いがちなのですが、照明を当てると影の形がまるで違って全く違う作品に見えてきます。
「CUBES 6」
「CUBES 6」別角度より撮影
影も合わせて美しい。陽の当たる部屋に飾ったら、時刻や季節、天候なども作用して、その日その時にしか見ることができない作品になりそうです。
左から「Crossing」「Strings 3」「Integral Panda」「Boundary Palabora」
作品を飾っている台もキューブを引き伸ばしたような形になっています。
「Crossing」
「Crossing」別角度より撮影
重ねて引用失礼しますが、オオタさんはブレイク前夜#305 内で「CGの世界では存在するけれども、それを実際に狭い意味での彫刻の作り方をすると、作るのは不可能だったり何十年かかかるような、そういったものを実現するというか、思った形をつくるのは今の方法でないとできないかなと思っています」と話されているのですが、この作品、中の色のついた部分はどうやって彩色したんだろう、、、?
「Strings 3」
単純な形と侮るなかれ。交差する線がもたらす目の錯覚で、特に上の面の辺が折れ曲がって見える、、、。
「Strings 3」別角度より撮影
いや、どの辺も真っ直ぐだ、、、。
「Integral Panda」
「Integral Panda」別角度より撮影
こちらの作品の素材は「石墨、樹脂」となっています。え、石墨ってグラファイト、鉛筆の芯の素材ですね。それを3Dプリンターでカットしたのでしょうか。樹脂で固めている? とは言え、パキっと壊しちゃいそうで緊張しますね。子供が鉛筆でぐるぐるとパンダを描いた、みたいに見えてきました。
「Boundary Palabora」
「Boundary Palabora」別角度より撮影
Boundaryは境界という意味です。2021年に同Gallery TK2で開催した個展「Boundary」は、Gallery TK2さんのYouTubeチャンネルにて、オオタさんが「キューブが壁を境界を突破する姿を見ることで、少しでも前向きな気持ちになれればいいなと思って作っています」と言及しているように、コロナ禍の最中で外出も制限されていた時期もあって、多くの人が感じていた鬱蒼とした暗い気持ちから解放されるよう、勇気づける作品シリーズでした。台の中に溶け込むような、または、台から飛び出してきたような形になっているのはそういう文脈があってのことなんですね。
左:「FACE smile 200」
右:「FACE anger 200」
左:「FACE sad 200」
右:「FACE pleasure 200」
キューブで表された喜怒哀楽。この作品群の素材も「石墨、樹脂」です。キューブという規格で構成されているのに、最終的に浮かび上がる顔文字の像が、まるで子供が鉛筆をぐるぐるして描く絵のように実際のマークよりも安定してないところが面白い。四角四面というと、生真面目、面白みに欠ける、堅苦しいという意味になりますが、四角という形は自然界に存在しない、人工物の象徴という見方もありますし、一番「人間臭い」形なのかもしれません。
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キューブを積み重ねることでメッセージのある彫刻作品を発表する。
ひとつひとつのキューブがひとりの人だとしたら、キューブが集まり積み重なることで社会が形成されていく。その社会のカタチは、人の関わり方、積み重なり方でどんなカタチにも変化していくのではないだろうか。
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キューブ = 立方体という規格がある形を用いながらも、オオタさんが作品に込めているメッセージは、見方を変えれば物事の見え方が変わるということであったり、境界を打ち破る前向きさであったり、個々人の関わり方で如何様にも変化できる社会であったり、と「人間の柔軟性」というテーマが核にあることが読み取れます。
「Structure Study」
「Wild Cube」
「柔軟性」ということを考えながら改めて作品を見てみると、入り口付近にあったBoundryのシリーズが「QOL」Quality of Life の文字に見えてきました。
「Boundary 6 tri Stainless steel」
Q・O・逆向きの L 、、、笑。
「Boundary 7 tri R Black」
いろんなアルファベットに見えますね。
「QOL」という言葉を最近よく目にすることによる錯覚ではありますが、Quality of Life で言われている「人生の質」というものが物質的なものに留まらず、精神的な満足度にも焦点を当てていることを考えると、オオタさんの作品から感じ取れる「柔軟性を持つことの大切さ」という示唆もQOLになくてはならない要素です。
思えば自然界だって突然変異はあれど、基本的には自然の摂理に則ったルールで営まれるものではあるし、コンピューターは何かしらの規則、指針、法則のもとで動いているシステムです。論理的じゃなく、感情によって予測不可能な決断や行動をするのは決まって人間。それは人間の特権でもあります。自然vs人間、機械vs人間、とせずに特権を活かした共存ができるのが理想だよなぁと改めて思ったりしました。
一見して四角四面ですが、見えてくる変化や温かみ、柔軟性と、示唆に富んだ作品群です。自分のベスト鑑賞ポイントを見つける楽しみもあります。ぜひ、足を運んでみてください。
展示風景画像:オオタキヨオ 個展「Cubes」
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