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感想 lee qura solo exhibition “sweeet..?”

 

lee qura solo exhibition “sweeet..?”

 

 

会 期:2022年7月2日(土) - 2022年7月10日(日)

時 間:13時-19時 (最終日18時30分終了) 

休 廊:期間中無休

場 所:MAT

展覧会URL:

https://www.instagram.com/p/CfiYbW3jCE0/?hl=ja


 

lee qura (イクラ) さんは1997年生まれ、EQUALAND SHIBUYAや雑誌SPURのイラストレーション、2021年には月光荘サロン 月のはなれ での個展「Borborygmi」や、2022年は渋谷のPilgrim Surf+Supplyでの「ART MARKET 2022」への参加など精力的に活動されています。

 

本展は、そんな lee qura さんのドローイングやキャンバス作品が堪能できる個展です。展覧会タイトル“sweeet..?” の「?」部分にも現れている、キュートな見た目だけじゃない、深い部分を探ります。

 

 

到着時、ちょうど lee qura さんによるメインビジュアルのライブペイント中でした。

 

迷いなく、どんどん進む筆。

私が伺った日曜にはタイトル “sweeet..?” に合わせて、お菓子やコーヒーの販売を行うイベントも行われており、会場は大盛況だったのですが、lee qura さんは手を動かしながらも来場者の皆さんに挨拶したり、描きながらも気を配っていました。しかも進みが早い。すごい。

 

水入れに使っている紙コップも、飲み終わりのファストフードのものをもらって使用、とのことですが、ポップでおしゃれに見える、、、


 

「sweeet..?」

かわいー! けど、、、ん? なんかいますね、、、?

 

匍匐前進する人? 本展のキャンバス作品には、このようにジェッソ (下地) のさらに下に描かれている部分があったりするそうです。まるで隠れキャラのよう。絵をよく観る人へのボーナスですね! この這っているような、あまり sweet には見えないような人物がいることで、可愛いサンデーの笑っている顔が、ラスボスのような不気味さを備えているように見えてきます。この部分の感じ方はそれぞれと思いますが、私には、インスタグラムなど視覚的インパクトが重要なSNSの流行により、見た目に「可愛い」くてキャッチーなものが溢れ、そのビジュアルにお腹いっぱいになって逃げ出そうとしている人の心情が感じられました。やはり、このサンデーはラスボスか。

 

作品「sweeet..?」の左右にあるドローイングにも、一筋縄ではいかない、隠れた意味がありそうです。

 

 

「take care」(拡大)

卵が割れてる。表情が険しくカチカチに硬くなっている人に「気をつけて」と優しい言葉をかけているのかな? 画面左の方に小さーい顔があったり。

 

「noon」(拡大)

中央に猫と、、、何かいる!


 

「PEACE OF MIND」(拡大)

「心の平和」というポスター。笑顔が胡散臭い? (考え過ぎかしら?)。全部大文字のスローガン ! なところが、ちょっと身構えてしまう。

 

「choices」(拡大)

青い地球とそうじゃない地球の選択。


 

「right」(拡大)

右利きロブスター。ロブスターの社会も右利き中心だったりするのか、、、?

 

「some day」(拡大)

漫画のコマみたいですが、場面の差がすごい、、、。海面上昇した世界で「Love !!」と書かれた飛行船を見ている、と、下のコマでは、ランプの精、ならぬ、鍋の精? が出てくる。温暖化の警鐘のために出てきた精霊でしょうか?


 

「LIFE IS」(拡大)

このアイス、よく見るとTバックのお尻! ネズミちゃん (?) のウハウハっぷりが凄い、苦笑。

 

「LIFE IS」のモチーフは会場内で販売しているTシャツにもプリントされています。

初日はもっとカラーバリエーションもあったそうですが、好評につき、品薄状態。


 

いました、ウハウハ♪

線だけでも、良い感じに抜け感が出て魅力的です。

 

こちらはコーヒー染めなので、裾にも染めムラのアクセントが。


 

「son-na-banana」(拡大)

そんなバナナ! 濃厚バナナジュースのお店の名前というのもあって、この往年のギャグが若い世代にも通じるのか?

現代美術でバナナといえば、The VelvetUndergrounand and Nico のアルバムに使用されたアンディ・ウォーホルの作品とか、2019年のアートバーゼル マイアミビーチでマウリツィオ・カテランのバナナをダクトテープで貼っただけの作品が高額で売れ、さらにそれをデビッド・ダトゥナが食べてしまってパフォーマンスアートにした話題などが浮かびます。現代美術によく登場するバナナ。lee qura さんの作品では女性が男性よりも前に出て強い笑顔を浮かべている。そんな世界は信じられない!?


 

「Good luck」(拡大)

タイトルで「幸運を!」と祈られていますが、行き先が「GO TO HELL (地獄行き)」という皮肉。しかもノリノリで楽しそうな人も乗っている。


 

うーん、私が穿った見方をしている可能性もありますが、作品は可愛くても、社会問題に対する lee qura さんの考えが垣間見れる気がします。

 

 

「so so」

 

「so so」(部分拡大)

乳首が笑っている😊


 

1作品ずつ主題が隠れているようで、面白い。

 

ドローイング作品はまだまだ続きます! (主題については気になったものをピックアップ)

 

左から:「101 (I do not die)」「YOU」「Sorry」

 

「101 (I do not die)」

この作品、lee quraさんに意味を訊かないと分からなかった、、、。

 

「101 (I do not die)」(部分拡大)

蹴られるサッカーボールの前に躍り出るカエル。「僕は死にましぇん!」でおなじみ、「101回目のプロポーズ」の名場面です (元ネタはサッカーボールとカエルではなく、トラックと武田鉄矢さんですが、、、)。右下、カエルの長い舌に指輪が。lee qura さん、動画で年代の区別なくドラマやアニメを観ているそうです。分からない人はもしよかったら「101回目のプロポーズ」を観てみてね。



左から:「waiting for」「split」「summer」

 

「waiting for」

紙の余白部分、右下に薄く、、、見えますか?

 

「waiting for」(拡大)

「11:11」のゾロ目。エンジェルナンバーってご存じでしょうか? よく見る数字には天使からのメッセージが込められているという、ややロマンチックな話があり、この作品では誰かからの連絡を待っている人が、そういう数字のメッセージを信じて希望を持っているような場面に見えます。sweet ですね。



左から:「devi-chang」「mege (メゲ) night」「first impression」「river」

 

「mege (メゲ) night」

これ、本当に細かい線で描かれているんです。

 

「mege (メゲ) night」(拡大)

泣いている人が、自分の感情を箱詰めにしている。箱から「broken heart」がはみ出している。なんだか切ない。sweet メモリーズ。


 

「Grandpa is come back.」

 

作品内のモチーフがラグになっていました。

lee qura さんの作品には身の回りのモノに顔がついていることが多く、モノに心が宿っているような温かさも感じられます。


 

上:「Have fun」 下:「destiny」

漫画のコマのような額装。額の大きさとマットの幅の広さのセンスが素晴らしい。

 

「Have fun」

 

「destiny」

「destiny's child」笑、ミトンが繋ぐ運命。


 

上:「EARTH」 下:「maze」

 

「EARTH」

これは温暖化を表現しているそうです。頭の上に白熊が乗っていたり、服を脱いじゃっていたり、鼻血も出ている。画面左下、有名な猫さんがいるの、気付きましたか? (私は見逃してました汗)

 

「maze」(拡大)

メロンに描かれた矢印。タイトルの通り迷路になってます。本当に入り口から出口に出れるそうです。えええ、細か過ぎる!


 

「SELF LOVE (?)」

メインビジュアルの「sweeet..?」の向かいに位置する大きめの作品。ダブルチーズバーガーにポテトの蝋燭を立てて自分にご褒美ということか?

 

「SELF LOVE (?)」(部分拡大)

こちらも隠れキャラが! ポテトの先に3匹ほど何かがいるの、見えますか? 下から見上げるようにしてやっと確認できます (※この画像は隠れキャラが見えやすいように色調を強めにいじってます)。


 

左より:無題、「tropical dreamin」「true 02」

 

無題

 

「tropical dreamin」


 

「true 02」

 

「true 01」


うーん、手に意味があるような、、、。

 

「PEACE」



作品に深い意味も隠されていますが、展示全体にも「こんなところにも作品が」というような、意外なところにふっと存在している構成になっていました。

 

「2022」

 

「greed」


 

「wish me luck.」

 

「PLASTIC」

自分がプラスチックだと泣くスポンジのキャラクター。あれ? 君、海綿かもしれないよ?


 

「drawing」

 

「drawing」(拡大)

世界津々浦々で見られる猫のキャラクターが確認できます。中央はなんだろう? 化け猫の独占欲?

 


「never let me go」って書いてあるけど、目がこっち見てる?


 

展覧会タイトルの “sweeet..?” の「?」について、lee qura さんに伺うことができました。sweet という単語には甘い、可愛い、優しいなど色々な意味があること、「sweet」と言い切るより、作品を観る人が「?」を「!」に変え「sweet !」となるように、意味を見出して欲しいという想いが込められているそうです。

 

私的には、作品に社会問題に対する考えや皮肉なども込められていると感じたので、「表面的に sweet に見えるモノでもしっかりと観察してみること」を促されているように感じられました。そういう意味では、「それって本当に sweet  ?」と問いかける「?」であるなぁ、と。

 

会期中の7月6日(水) には、 sweet にちなんで、ケーキ販売のイベントがあるそうです。


実際に見てもらうと分かりますが、ドローイングはとても細かい線で描かれています。その細かさ、作品の主題、 sweet な部分を見つけに、ぜひ足を運んでみてください。

 

 

展示風景画像:lee qura solo exhibition “sweeet..?”


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