BIOLETTI ALESSANDRO solo exhibition
“ARE YOU A REBEL?”
会 期:2022年6月24日(金) - 2022年7月13日(水)
時 間:12時-19時 (最終日17時終了)
休 廊:
場 所:BOOKMARC TOKYO
展覧会URL:
https://www.instagram.com/p/CeiyKR4gQYi/?hl=ja
BIOLETTI ALESSANDRO (ビオレッティ・アレッサンドロ) さんは1986年生まれ。イタリアのトリノ出身、2015年より日本在住。子供の頃、70年代に出版された日本の写真集を見て衝撃を受け、日本の事柄に興味を持ったそうです。POP・PRETTY・FUNNY というキーワードを軸に作品を制作。広告、キャラクターデザイン、挿絵、漫画、絵本など幅広いメディアにイラスト作品を提供されています。本展の一画にも今まで手がけられたクライアントワークが展示されていて、ビオレッティさんの作品を見たことがある、という方も多いと思います。
クライアントワークの数々
本展 “ARE YOU A REBEL?” は、3年ぶりの個展となり、会場に掲示された〈はじめに「CIAO!」〉の中では、近年はクライアントワークが主であった為、オリジナル作品に向き合う時間がなかったことや、「あのウィルス」の騒動で、メディアが一つの声に固まってしまい、広く感じていた世の中が急に狭くなって感じられたことなどが影響して、思うように作品が描けなくなっていたことなどが語られていました。しかし、同時に奥様からカントリーサイドに移住する話などがあって、ビオレッティさんの筆は再び動き始めます。新たなテーマを探りながら「RETURN TO NATURE」という作品が生まれたそうです。
展覧会タイトルの “ARE YOU A REBEL?” のREBELについても言及がありました。
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REBEL (レヴェル) とは
日本語で訳すと "反抗者" になります。日本語にしても少し悪そうな意味合いの単語で、訴えや暴力を通じて何かに反対しているような感じがします。でも小さく言えば、例えば学校に行きたくない子供は学校に対してレヴェルになってしまうかもしれないです。僕にとってはレヴェルの意味合いは、自分の考えを持って生きる事です。これは大して変わらないことですが、一つの意見に固まってしまったこの世の中では、自分のアイディアを大切に育てるよりは、一つの意見を取り込んで人生を歩む事が普通になったと感じます。前みたいに自分の意見を簡単に言えなかったりして、人と人の距離感が遠くなったからこそ、ディスカッションをすると言うより問題を起こさないような薄い会話が増えた気がします。だから自分の意見をしっかり持つ人は、世界的にレヴェルのようになっているとこの数年で思いました。イラストレーターとして、自主制作で新作に向き合い、自分のアイディアやルーツを大切にしたり、何度も崩したりして、自分を批判しながら一つ一つの作品を重ねていきます。この展覧会の中の絵も同じコンセプトで作られています。
(BIOLETTI ALESSANDRO solo exhibition “ARE YOU A REBEL?” 会場掲示ステートメント)
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展示タイトルと作品を観た時に、REBELという「悪そうな意味合い」はあまり感じられなく、どういうことだろうと思っていた部分でしたが、なるほど、自分自身の考えを持ち、表していく人のことを指しているのですね。
「REBEL DARUMA」
こちらの作品は、真っ新な「白河だるま」にペインティングを施したもの。
白河だるまは、「寛政の改革で有名な松平定信公の「市民の生活をより元気に」という想いから幸運をもたらす縁起物として (白河だるま総本舗 白河だるまとは? 《白河だるまの歴史》 より抜粋)」誕生したものです。
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だるまを作る際に「技術」よりも大切にしていることがあります。それは『あなたの個性を尊重する』ということです。あなたの表情が他の人と違うように白河だるまも一つひとつが違う表情をしています。技術革新のおかげでいまでは同じ顔のだるまを生産することができるようになりました。しかし、私たちがそれを行わない理由はただ1つ。あなただけにしかない「個性」があるように、手書きにこだわる職人だけにしか生み出せない「個性」がそこにはあるからです。
(白河だるま総本舗 白河だるまとは? 《職人たちの誇り》より抜粋)
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というように、白河だるまには本展のビオレッティさんのREBELの考えに通じるものがあります。
ビオレッティさんのだるまは、POP・PRETTY・FUNNY なだるまになっていて、表情も日本で見慣れただるまとは違った個性的な印象を受けました。
他にも新作を中心に作品が展示されています。
「お出かけ」
「目玉焼き」
それぞれ、カッパ、魔女、のステレオタイプなイメージとは一味ちがった表情が見えます。
「距離感」
これは色彩やインテリアなどから、イタリアの雰囲気を感じる。タイトルの「距離感」については「あのウィルス」のこともあって、本当に遠くなりました、、、。ステートメントにもあった、自分の意見を簡単に言えなくなったという側面から人との距離が出来た、ということに考えが及びますが、絵の中の人物はちゃんとお互いに主張していそうです! 物理的な距離感が遠くても、主張できる仲ならば、距離感は近く感じられます。
おや、背景には相撲の絵が飾られていますね。
「YOKOZUNA」
相撲繋がり。こちらの作品は日本! 江戸! という感じがします。東京23区全図の上にペイントされています。左下のQRコードを読み込むと「YOKOZUNA」のNFT作品が観れます。NFTでは背景もまた違い、動きがある作品です。
かわいい。この子、気になります。
上:「みっけ」
中左:「おばけのチャーリー #1」 中右:「おばけのチャーリー #2」
下左:「おばけのチャーリー #3」 下右:「おばけのチャーリー #4」
おばけのチャーリー! あなたチャーリーっていうのね?
「みっけ」
左にあるQRコードを読み込むと漫画が読めます (Amazonのログインが必要)。6月25日に開催されたトークショーで、観察眼鋭い少年から、お坊さんの頭の上になぜリンゴが乗っているのか、という質問がありました。ほんとだ、気づかなかった、、、。答えは漫画の中に。
「おばけのチャーリー #3」
おばけなのにお経が効かなかったり、怖がりだったり。自分自身の中にいる "反抗者" の精神が分離して現れたのがこのチャーリー!? (さすがに深読みしすぎかしら、、、)。チャーリーはとても親しみやすく、自分に素直に行動している気がする。
「UFO」
カミシモを着ている武士がいるから江戸時代でしょうか? 江戸時代にUFOが。あり得たかもしれない話ですね。異なる者はどのように受け入れられたのでしょう?
「BAD BOY」
このシリーズ、とても惹かれる。いつもニッコリと笑った顔を描くビオレッティさんですが、これらでは「への字口」、怒っているような表情を描いています。タイトルに「BAD」とあるけど、そんなに悪い人たちに見えないなぁ。ファッションも個人の好みが前面に出ていて好感が持てる。自分の意見や気持ちを表すことが、必ずしも衝突を生むわけではない、と改めて思います。
「BAD BOY #1」
歯までオシャレ。
「BAD BOY #2」
タトゥー君。般若のようなモチーフも彫ってある。
「BAD BOY #5」
普通に良い友達になれそう。
上:「OHAKO #1」 下:「OHAKO #2」
OHAKOって十八番ってことかな?
「WILD STEREO」
こちらもQRコードから漫画が読めます。登場人物3人のクールなダンス。絵をぐるっと囲む変形のフレームの効果もあって、映像が観えてきそうな躍動感がありますね。色使いに、またしてもどこか「イタリア」らしさを感じてしまいます。
「ワンダーコーヒー」
このQRコードはNFTの販売サイトにリンク。こちらの作品は BIOLETTI ALESSANDRO x Coffeeling Coffee「T3」ドリップコーヒーのパッケージになっています。
「涙吹き」
ひょっとしたら「涙〈拭〉き」かもしれないですが、涙を吹き飛ばすという意味かもしれません。ポロをしている見たことがあるシルエット。ハンカチの刺繍のイメージかな?
まだまだ続きます! 会場にはドローイング作品も。
左:「A "PEACE" OF APPLE」 右:「going to the new world」
「らくがき、アイディア、遊び #1」
「らくがき、アイディア、遊び #2」
「らくがき、アイディア、遊び #3」
「らくがき、アイディア、遊び #4」
ドローイング作品に見られる遊び心も面白い。
そして、ストリートを感じるかっこいい作品群も。
「Wave」
この記事を書く時に気付いたことですが、この作品には黒と緑の市松模様がふんだんに使われています。それでもあの『鬼滅の刃』を全く意識しないで鑑賞できた作品です。『鬼滅の刃』は吾峠呼世晴による日本の漫画作品で2016年から2020年にかけて連載、アニメ化、映画化され、大ブームとなりました。『DEMON SLAYER』のタイトルで海外にも輸出されています。黒と緑の市松模様は、主人公、竈門炭治郎が着ている羽織の模様で、多くの企業とのコラボレーション商品が販売された経緯から、一時は、黒と緑の市松模様の柄を使用している商品を見るにつけ「鬼滅」っぽさを感じてしまい、シンボル化してしまったのか? と感じるほどでした。もちろん、ビオレッティさんの作品は『鬼滅の刃』をイメージしたものではありません。それでも、日本では刷り込みのように象徴化してしまった幾何学的な模様:黒と緑の市松模様を、自然と意識させずに、それどころか「イタリア」らしい明るく陽気な印象を与えさせていることに、驚きを感じています。「イタリア人の血」「日本人の血」「血が描く」、ルーツの差異というものは、絵に如実に出現する?
「Icecream」
ここにも市松模様。
「Graffiti」
グラフィティも個性的です。
その他、限定販売のこけし、ジグソーパズル、ピンバッチも販売されていました。画像にはないですが、先行販売、限定200部の作品集もあります。
ビオレッティさんは日本が好きで来日され、在住歴も長く、トークイベントの映像を観るに日本語もお上手で、日本人の私からするととても親近感が湧くのですが、作品の、特に色彩部分にどことなく「日本」とは違う「イタリア」らしいビビッドさを感じます。私が思う「イタリア」らしいビビッドさというものが、果たして本当に「イタリア」特有のものか裏付けはありませんが、少なくとも「日本」では生まれないような色合いに思いました。それが悪いとか、異質だから変だ、ということではなく、むしろ、その部分に魅力を感じます。例えば、日本人が描くとなぜか奥行があまり感じられないのっぺりした絵になってしまう、でもそれが良い、というように、自分のルーツを気兼ねなく発揮でき、差異があるからこそ惹かれる、という分野の一つがアートなのかな、と改めて気付かされたようにも思います。「REBEL」のテーマである、自分の意見を持つこと、どう思うか自分に正直に問いかけること、それを発することへの勇気をもらえました。
「BAD BOY」もいたりしますが、それが心地よい展覧会でした。「への字口」な時があってもいいよね! ぜひ、足を運んでみてください。
展示風景画像:BIOLETTI ALESSANDRO solo exhibition “ARE YOU A REBEL?”
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