福島淑子 旧作展「Back to the Past Memories」
会 期:2022年10月15日(土) - 2022年11月19日(土)
時 間:12時-19時
休 廊:日月祝
場 所:GALLERY MoMo Projects (六本木)
展覧会URL:
福島淑子さんは1985年生まれ、武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。シェル美術賞展 (現 Idemitsu Art Award) で2006年に審査員賞、2007年にグランプリを受賞。主に、観る人を引き込むような不思議な魅力のある人物画を発表されています。本記事でご紹介するGALLERY MoMo Projects (六本木) の個展「Back to the Past Memories」では旧作が、同時期開催のGALLERY MoMo Ryogoku (両国) では新作が鑑賞出来ます。新旧の作品群の共通点や相違点を見比べることが出来、興味深い展示構成になっています。→新作個展「Iridescent Memories」の記事はこちら。
本展は旧作展ということなので、作品の制作年もタイトルに併記します。
「small breathing 2」(2008)
目の周りや手の緑色、髪の毛の描かれているところと描かれていないところ、画面の白のバランスなど、抽象的にも見える画面ですが、不思議と描かれている人物を守りたくなるような、感情移入が自然と出来てしまうような作品です。少し気掛かりなことでもあるのかな?
「someone's portrait」(2014)
こちらの人物も、不安か不満がありそうな印象を受けましたが、負のイメージに留まっておらず、ROCKな勢いまで突き抜けている気がします。かっこいい。
「記憶の軌跡」(2014)
工芸細工にある模様のようにも見えます。
「記憶の軌跡」(部分拡大)
男性と女性が連なっている、、、?
「記憶の軌跡」(部分拡大)
表情があまり変わらない、男性のような人物の連なりと、表情の変化が見られる、女性のような連なりがあります。
「記憶の軌跡」(部分拡大)
表情がほとんど変わってない連なり部分。タイトル「記憶の軌跡」ということから連想すると、記憶の中の表情が常にこういう人なのか、何かを思い出そうとする時の顔がこうなっている人なのか。
「記憶の軌跡」(部分拡大)
割と表情が変化しているほうの連なり部分。何となく記憶を思い出している表情のように見えます。記憶って実は曖昧で主観が入って改竄されていたりもしますよね。二重螺旋が遺伝子を思わせ、曖昧な記憶の連鎖による人の歴史、を暗示しているようにも見えます。
少しずつ雰囲気が異なる作品群です。それぞれに引き込まれます。
「someone's portrait」(2016)
「someone's portrait」というタイトルは他の作品にも多く付けられているのですが、この、どこかで自分も出会っていたような特定の「誰か」を見ている感覚が、作品に引き込まれる理由かもしれません。
「kaleidoscope」(2011)
模様のような人物の連なり、その2。髪の毛、手、足などで繋がっています。総勢14名。ただ面白いというだけでなく、人との繋がりから連想して「バランスの取れた社会とは?」というようなことまで考えてしまう不思議な作品。
左:「portable 2」(2011) 右:「portable」(2011)
portable (持ち運び可能) とは、、、髪の毛が取っ手なのかしら? 目や表情がかっこいい。
「someone's portrait」(2014)
ROCKな雰囲気を感じます。アンニュイで強い。
「someone's portrait」(別角度より撮影)
下辺にちらと見える赤いの部分もアクセントになっていてかっこいい。
「someone's portrait」(2014)
ジャミロクワイ感?
左:「[ ]」(2009) 右:「[ ]」(2010)
[ ] というタイトルです。無題ということなのかも知れませんが、そのまま記載します。表情と色と構図と、惹かれる不思議な魅力があるんですよね。
「[ ]」(2011)
暗めの色味や、特徴のある目、白い肌など怖く見える要素もあるのに、あまり怖くない。反骨心。子供が持つROCKな部分。間違っていると思う部分をじっと見つめるような強さと脆さと暗さ。
「someone's portrait」(2016)
ほのぼのした風景ですが、色がかっこいい。
顔だけで色んなことが想像出来るのだな、と改めて気付かされました。背景や設定を暗示するものは何も無いのに、それぞれの表情から深い物語の世界へ引き込まれていくようです。
左:「someone's portrait」(2016) 右:「someone's portrait」(2016)
左上:「someone's portrait」(2014) 左下:「someone's portrait」(2014) 右:「someone's portrait」(2014)
「untitled」(2016)
顔だけでなく、手も語る。一人の人物を見ているような一体感もあります。
「someone's portrait」(2016)
男性なのか女性なのか、気持ちよく寝ているのか、苦しんで倒れているのか。明確になっていないからこそ画面に引き込まれるのでしょうか?
絵の純粋な魅力を感じます。
それぞれの顔がかっこよくてしびれる、、、。顔だけで。いや、私は顔を軽んじていたのではなかろうか? 人の顔ほど、多くを語れるモチーフはない。
左:「someone's portrait」(2016)
右:「someone's portrait」(2016)
左:「someone's portrait」(2016)
右:「someone's portrait」(2016)
左:「someone's portrait」(2016)
右:「someone's portrait」(2016)
「夢のつづき」(2007)
ちょっと幽体離脱しているようにも見えます。夢のつづきを見たい時は同じ姿勢て眠ると良いときいたことがあったな。
「夢のつづき」(部分拡大)
同じ姿勢で眠ろうとしている人物?
「夢のつづき」(部分拡大)
指の並びがちょっと不思議な形になっているこちらは幽体?
「[ ]」(2009)
「[ ]」(2010)
描かれる人物の顔や手、体の線など、絵そのもので魅せる福島さんの旧作群でした。ROCKなかっこよさも、描かれた時代によって変遷しているように思います。好きなバンドのアルバムを並べて聴いていくような楽しさがありました。
ある一方の現代美術の傾向として、「キャラクター」というモチーフが表現として形式化し「キャラクター」そのものには個別の意味や差異がなくなっていくかのように感じていましたが、福島さんの描く人物像はその流れの真逆のベクトルを持っているようです。それぞれの人物の表現そのものに意味があると思います。
別会場の最新作は一体どうなっているのでしょうか?
旧作新作ともに、ぜひ、足を運んでみてください。
展示風景画像:福島淑子 旧作展「Back to the Past Memories」
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