three 個展『three is a magic number 20』
会 期:2023年8月26日(土) - 2023年9月10日(日)
時 間:9:00~22:00
(代官山蔦屋書店1階の営業時間の通り)
休 廊:無休
場 所:代官山蔦屋書店 2号館 1階 ギャラリースペース
主 催:代官山蔦屋書店
展覧会URL:
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/art/35046-1746340726.html
代官山蔦屋書店2号館1階ギャラリースペースにて、three (スリー) の20回目の個展『three is a magic number 20』を観てきました。
three は、川崎弘紀さん、佐々木周平さん、小出喜太郎さんの3人から成る2009年結成のアーティストユニットで、国内外における個展やグループ展、アートフェアへの参加等、精力的に活動されています。
下↓の動画は今年 (2023年) 5月にNew Yorkで開催されたアートフェア、VOLTAの様子です。threeの作品は GR galleryブースでの展示風景が映っています (49:00〜49:07) 。
無数のフィギュアが集合して一つの生命となっているような、グロテスクでもあり、POPでもある作品が特徴です。キャラクターを大量に消費する時代を象徴しているようでもあります。
以下から本展の展示作品画像です↓
「2211g」
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タイトルの「2211g」は作品の重さを表しています。
輪切りにされているところは、ダミアン・ハーストのホルマリン漬け動物の作品を想起させます。
「2211g」(別角度より撮影)
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各々のフィギュアが持っている顔や下肢といった記号と、素材としてのプラスチックを強調し再構成された全体像とで、個人が抱くフィギュアへの感情と、結局それはただのプラスチックであるということの「差」を浮き彫りにしていて、一体私たちは何を持ってプラスチックの中に魂を見出すのか、ということが問われている、と感じました。
また、threeの3名は福島出身ということで、やはりどうしても2011年の3.11 = 東日本大震災を考えてしまいます。流れ着いた瓦礫が集積する様子を映像で観たことがあります。瓦礫は元々は整然と区切られて建物を形成していたものであり、「人々の生活の象徴」とも言えるその建物の破片が水の流れによって一緒くたになっていく様子は、何とも言えない感情を喚び起こさせました。
「139.3g」
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フィギュアを溶かして、一つの画面として提示しています。タイトル「139.3g」は重さです。
本展でのメインとなる新作は33点のゲームボーイの作品です。実際に使われていたゲームボーイ機とフィギュアから構成されています。
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懐かしさもあって、多くの人が足を止めていました。「ママが持ってたのはねー、、、これだ、この色!」というような会話が生まれたり (上記の画像は人がいない時をしぶとく待って撮りました) 。
ゲームそのものの具現化のように、マリオならマリオ内のキャラクターで統一されたフィギュアが1台のゲーム機の中に詰まっています。
フィギュアの溶け具合や大きさもそれぞれの作品で違っています。
タイトルは「GAME BOY pocket Display」で統一されています。
アーティスト名も "three" であったり、と、検索してもすぐ辿り着けないような普遍性を持っていて「特定できない」ということが作品や活動のテーマになっているのかな、と思いました。
並べられた「GAME BOY pocket Display」の統一のタイトルも普遍性や匿名性を強調していて、「ピンポイントで想起されるエピソード」というような要素は見当たりません。それは「2211g」や「139.3g」というように重量をグラム表記したタイトルの作品群にも言えると思います。提示されるのは飽くまでも「特定されない」ものなのですが、それを観る私には、かえってそのもの自体に宿っている「個」を感じさせます。GAME BOYやフィギュア遊びなどの思い出は少ないのに、そのものに個人的な思い出や「魂」が宿っているように思えてしまう。そして、たくさん遊んだ思い出を持つ鑑賞者には、前述の「ママが持ってたのはねー、、、これだ、この色!」というように「自分ごと」として思い出される仕掛けにもなっています。
人が亡くなった時に21g減ったという話から、魂の重さは21gという俗説がありますが、これらの「GAME BOY pocket Display」にもその重さは含まれているのか。または、すでに失われているのか。作品の前を通り過ぎる人の思い出や記憶もg (グラム) に変換されるのか。
現代は大量のキャラクターが消費されている時代と言えると思いますが、ディスプレイ越しのアニメ、ゲーム、ネット上の画像等々、キャラクターの重さを直接感じられないものが多い中で、フィギュアやGAME BOY機本体は g (グラム) としてキャラクターの魂を感じることが出来たものだった、と言えるかもしれません。会場にいらしたみんなのギャラリーのスタッフさんのお話で「プラスチック問題もあり100年後にはプラスチック製品は一切製造されないかもしれない」というのが印象的でした。
また、聞こえてくるレトロゲームのようなBGMは、中央の機体から流れています。実際に動くオリジナルゲーム「three is a magic number 20」も制作されていて、カートリッジが販売されています。
このnot for saleの機体のみ、スタッフの方に声をかければ実際にプレイすることが出来ます。
※他の作品には手を触れないでください。
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実際の three のアトリエを模した部屋に入ることが出来ます。
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「やぁ、ぼくはコイデ。おもにフィギュアさくひんをたんとうしているよ。」
実際のアトリエにもフィギュアがたくさんあるとのことで、ゲーム内のアトリエにもたくさんのフィギュアが置いてあります。話しかけると「フィギュアだった」と表示されたりして、懐かしのRPG感満載です。
「three is a magic number 20」
とてもキャッチーで目を惹く作品群ですが、「つくられたもの」に投影する人間の想いや、抱く感情はデータと実体で差異はあるのか、など色々考えさせられる展示でした。
100年後に、この「プラスチック製品としてのキャラクター」は文化的に貴重な資料になっている可能性もあると思います。
懐かしさを感じられるとともに、それほど昔でもないのに貴重になりつつある文化ということからも今いる時代を俯瞰出来る展示と思います。ぜひ、足を運んでみてください。
展示風景画像:three 個展『three is a magic number 20』 代官山蔦屋書店 2号館 1階 ギャラリースペース, 2023
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