木村了子 個展「神楽坂の愛人の家」
会 期:2024年12月7日(土) - 12月28日(土) /
2025年1月7日 - 1月18日
時 間:12:00-19:00
休 廊:日月
場 所:eitoeiko
展覧会URL:
神楽坂にあるeitoeikoにて、木村了子 個展「神楽坂の愛人の家」を観てきました。
本記事は2024年12月に鑑賞した時の画像を載せておりますが、今現在は展示作品がさらに追加されているようです (12月中はひどい風邪を引いたり貧血になったりと散々で記事にするのが遅くなりました💦)。
木村了子さんは日本画の技法で "美男" を描く作家として知られています。しかも官能的。
美術の歴史の中で裸体の画題として選ばれてきたのは "女性" 、というイメージが強いです (実際に男女どちらのヌードが多いのか厳密にわからないのでこんな言い方ですが。なお、ゲリラ・ガールズによる1989年の有名な風刺ポスター "Do women have to be naked to get into the Met. Museum?" 女性がメトロポリタン美術館に入るには裸にならないといけないのか? によれば、メトロポリタン美術館のモダンとコンテンポラリー部門で展示されているヌードは85%が女性のヌードとのこと→参照:Met Museum Museums Without Men: Guerrilla Girls。このパーセンテージは2023年に渋谷PARCOで開催されたゲリラ・ガールズの展示では76%になっていました)。ゆえに "官能的な美男" が描かれた木村さんの作品群はフェミニズム的な文脈で語りたくなってしまいますが、、、ひとまずその語りたい気持ちは置いておいてまずは作品を観てみましょー❗️
本展については "ものがたり" が公開されています→http://eitoeiko.com/exhibition.html
それによると、還暦を過ぎた既婚の画家が展覧会に来た若いイケメンに惹かれモデルとしてスカウトし夫の留守中に自宅兼アトリエにて作品制作をおこなう、というものですが、、、なんだかソワソワしますね❗️神楽坂の住宅街にある自宅兼ギャラリーのeitoeikoにぴったりな設定だと思いました。
会場に入るとこの大作が目を惹きます。この作品は裏からも鑑賞できます。
"ものがたり" のイントロダクションによれば、作家はそのイケメンをアトリエに招き入れ、以前描いた《オダリスク》シリーズに再度着手した、とのことです。
オダリスクとはオスマン帝国のハレムで君主に使える女奴隷のことです。アングルの《グランド・オダリスク》が思い出されます。
ドミニク・アングル《グランド・オダリスク》(1814)
木村さんの作品はこの作品と構図が対照になっている、、、?
裏から見た画像を撮り損ねたのでぜひ会場で観てもらいたいですが、背中、支えている肘、脚の組み方など《グランド・オダリスク》を左右反転させたように見えます。
また美術史ではお馴染みの、ジョルジョーネ《眠れるヴィーナス》→ティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》→マネ《オランピア》と続くオマージュも思い出しちゃいました。ネコが描かれていたからでしょうか。
ジョルジョーネ《眠れるヴィーナス》(1510)
動物なし。神なら裸体を描いてオッケー👍
からのオマージュ
ティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》(1538頃)
足元にワンちゃんが出現。
この作品は依頼主のウルビーノ公爵が若い奥さんと結婚していたことから「夜はこうやって挑発して❤️」と若妻を教育する目的で描かれたという説があります。ということでワンちゃんは "貞節" の象徴として描かれているのではないかと言われています。
からの
さらにオマージュ
エドゥアール・マネ《オランピア》(1863)
足元に黒ネコちゃんがいます。
オランピアとは当時のパリにおける娼婦の通称です。神の裸体じゃなくてリアルな娼婦の裸体を描いちゃった、ってやつです。黒ネコは女性器を表していると言われていますが、オマージュ元の《ウルビーノのヴィーナス》のワンちゃんと対比させるならば、このネコちゃんは "気まぐれ" とか "性の奔放さ" の象徴と解釈可能と思います。
ということで木村さんの作品に戻りましょう。
にゃーん😺
模様から推測するに、ベンガルネコでしょうか?
ちなみにベンガルネコの性格は、、、
エネルギッシュで遊び好きながら、人懐っこい
(参考:みんなの猫図鑑)
おおぅ、、、やるなぁ兄ちゃん
そして背景に描かれている屏風ですが↓
奥に屏風作品があり、自宅兼ギャラリーである会場のeitoeikoが、この個展の "ものがたり" の舞台である自宅兼ギャラリー兼アトリエとリンクする、という効果的な配置になっています。
イケメンパラダイスな竜宮城
↑画像の左側に写っている掛け軸の作品をどこまで大きく掲載して良いのか、悩ましいところ。
大丈夫そうなものをUPしますねー
ここにもネコちゃんいた
冒頭、フェミニズムの文脈で語りたくなる、と書きましたが、実際に鑑賞して感じたことはフェミニズム的文脈ではなく "男性礼賛" というものでした。
SNSで目にした男性による本展の感想もポジティブなものが多いようです。「男性のこういう官能的な側面が好き」と明示されてイヤな気分になる人は少ないわけです。
これは女性のヌード作品に対しても言えることで、観て不快にならない作品、不快どころか「この作者はほんとに女の人が好きなんだろうなぁ」と感じる場合は好感さえ持てます、私の場合ですが。
つまり、女性の裸体を画題にすることが女性を不快にさせるわけではなく、リスペクトが感じられない場合にはじめて不快になる、ということなんです。
男女反転させて見えてくるものがあると、思わぬ発見があった展示でした。
ぜひ、足を運んでみてください。
展示風景画像:木村了子 個展「神楽坂の愛人の家」eitoeiko, 2024
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