Jiabao li, トモトシ, 馬嘉豪
「支配のためのプラクティス」
会 期:2025年3月14日(金) - 4月4日(金)
時 間:13:00-20:00
休 廊:日、月
場 所:TAV GALLERY
協 力 : Gallery ETHER, Token Art Center
展覧会URL:
https://tavgallery.com/practicesofdomination/
今年 (2025年) 初めの『frieze』マガジン※ #248 の「Editor's Letter」には、ドナルド・トランプのアメリカ大統領就任の件が取り上げられていました。
※『frieze』マガジン……UKで年8回発行される国際的な現代アートマガジン。90年代のYBA (Young British Artists) ムーブメントにも密接に関係している。創刊メンバーが立ち上げた Frieze Art Fair はアートフェアとして世界的な認知を得ており、2023年にはNYの The Armory Show を買収したことでも話題になった。
かいつまんで「Editor's Letter」の内容を紹介しますと、トランプ大統領の就任を、民主主義・人権・アートの危機であるとし、グローバルなアートの世界にとっては逆風であると捉えています。そのような状況にあっても、臆せず統治者側に異を唱え批判するアーティストやライター、研究者、活動家を支援することを宣言しています。

さてそんな昨今、TAV GALLERY で展示を観てきました。展示タイトルは「支配のためのプラクティス」。
“旗“ をキーに、Jiabao li (ジアバオ・リー) 、トモトシ、馬嘉豪 (マ・ジャホウ)の作品が並んでいます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
近代以降の国際社会において「支配」とは、必ずしも暴力的な征服や直接的な支配構造を指すものではなく、むしろ人間同士や国家間の目に見えない関係性の中で作用し続ける概念である。本展「支配のためのプラクティス」では、グローバルな視点を背景に、それぞれ異なる歴史、文化、技術に根差した3名のアーティストによる作品を通じ、支配というテーマを再定義し、その多層的な意味を問いかける試みを展開する。
佐藤栄祐 TAV GALLERY「支配のためのプラクティス」より抜粋
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本展は、混沌化する国際社会における「支配」のあり方を探る実験的な場である。「旗」という共通の象徴を用いながら、それぞれのアーティストは、政治的・文化的・環境的文脈に根ざした独自のアプローチを展開する。支配は単なる国家間の力関係や政治性の表出ではなく、テクノロジーや資本主義、人間中心主義の視座からも多面的に解釈されるべきものである。本展が提示するのは、支配の構造そのものを批評し、新たな自由の定義を模索する試みである。「支配のためのプラクティス」は、国境や文化、歴史を越えたインターナショナルな視点から、現代における支配と自由の関係性を問い直す契機となるだろう。観る者にとって、この展覧会は単なる批評の場ではなく、私たち自身の生きる世界とその仕組みを再考するための実践の場でもある。
佐藤栄祐 TAV GALLERY「支配のためのプラクティス」より抜粋
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
馬嘉豪《団結一心、新世界へ進もう。》

馬嘉豪 (マ・ジャホウ) は中国出身で日本を拠点に活動するアーティストです。この《団結一心、新世界へ進もう。》は画一化された世界観を表していて、日本人の私は強烈な皮肉を喰らわされたような気持ちになりました。

みんなどこかを見上げているけど、微妙に目線がバラバラですね。共通のバッジが不自由さを不気味に暗示しているようです。男女が一対になっているところにも異性愛規範という価値観の強要を感じてしまいます。ちなみにこの《団結一心バッジ》も販売されています。
「新世界へ!」という標語が頭に浮かびましたが、画一化された新世界に希望は持てるのでしょうか?
そしてこの作品の中には、今現在、中国人に土地を買われまくっている日本、という現実も込められているそうです。
太平洋戦争を直接経験したわけではなくてもその歴史と反省を授業等で学ばされてきた日本人の私には、画一化に対してアレルギーみたいなものを潜在的に持っています。一方で、団結しないと成し得ないこともあるだろうし、場合によっては容易に侵略されちゃうこともあるだろうし、自由とは?未来はどうなる?新世界はどのようなものであれば幸せなのか? 等々、考えさせられました。

国会議事堂前の整列した群衆の部分をGoogleで画像検索すると複数の ”赤を基調とした旗” の国の記事がヒットしました。

馬嘉豪《Rubik Cube Mansion》

こちらの作品を観た時、普通に「ルービックキューブだ❗️」と思いそこから思考停止してしまったのですが、よく考えたら各面をどのようにそろえたら正解なのか、まったくルールがわかりません。
画一化にアレルギーを持っているのに一定のルールは欲しがる私、、、。これは私だけのことでしょうか?
トモトシ《革命するつもりはない。/We're not going to start a revolution.》


トモトシは建築や都市計画に携わったバックグラウンドを持ち、都市空間を舞台に公共ルールに歪みを生むアクションを起こすことで人々の動きが変化する瞬間を映像におさめています。
この《革命するつもりはない。/We're not going to start a revolution.》では、降伏を意味する白旗を掲げて闊歩する様子が映されています。場面によっては集団と共に行進しているようにも見えます。通常ならそのような行進は何かスローガンを掲げているように見えるものですが、、、掲げているのは ”降伏の白旗” なんだよなぁ。
作品タイトルの「革命するつもりはない。」という言葉が真逆にも受け取れる (つまり革命する気が満々であるように受け取れる) 不思議な作品です。


トモトシ《美しい日本の私たち/Japan, the Beautiful, and Ourselves.》


こちらの作品は2019年の作品です。そうです、新型コロナなんて脅威が来るとは誰も知らず、翌年には東京オリンピックが開催されると信じていた時の作品です。
東京オリンピック2020のシャツを着たトモトシが拡声器で通勤している人々に呼びかけています。オリンピックはもうすぐだから、信号を待つ時も綺麗な列を作ってね、あなたがたのふるまいは海外の人に見られていますよ、日本を代表する者として美しくあろう、的なことを英語で呼びかけています。英語というところが太平洋戦争で敗北した日本をGHQが管理・主導したことを想起させるような?








行政の係か何かのような堂々としたパフォーマンスゆえに、とうとうトモトシに道を尋ねる人も現れます。ここ、めちゃくちゃ面白かったです。


しかしこの作品には純粋に面白がっていられない部分があって、つい最近の東京オリンピックの時でさえ私たちはこのように直接呼びかけられなくてもまるで何者かにそう強制されたかのようにふるまっていなかったかと振り返させる力があります。
そういえば今年もEXPO 2025 大阪・関西万博が開催されますね。

Jiabao li《“THANK YOU“》




Jiabao li (ジアバオ・リー) は気候変動や人新世、人道的テクノロジーに取り組む作品を制作し、MoMAやヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展での展示等で国際的に評価されているアーティストです。
この《“THANK YOU“》という作品はツルハシにひっかかったビニル袋が旗になっています。まるでゴミが勝手に飛んできてひっかかっただけなのにそれがこの場の領有を主張しているかのようです。
“旗“ の形状の持つ力とはすごいものがあると改めて感じた作品でした。分解されればただのツルハシとビニル袋でしかなく、何かの作業を中断してコンビニで買ってきたものを食べて休憩する際に、風で袋が飛んでいってしまわないようにひっかけておいた、というようなストーリーも成立する組み合わせなのに、急にこの地の領有を主張しているように見えるのです。
ビニル袋に書かれた “THANK YOU“ の文字も「誰も旗を立ててないからとりあえずこの土地をいただきまーす、ありがとー♡」的なノリに見えてきます。
Jiabao li《Could an Arctic Fox Give a TED Talk?》

極寒の地で何か奇声を上げている Jiabao li 。
彼女が立っている場所は👇

丸いレッドカーペット。
これはTEDで話者が立っているあのカーペットを表しています。


奇声だと思われたのはキツネの鳴き声だそうです。彼女はホッキョクギツネを聴衆にしてTEDトークをおこなっているのでしょうか。
ちなみに Jiabao li は人間相手のTEDに出演したことがあります。
テクノロジーが現実をどのようにフレーミングして私たちに提供しているのか、作品を通して明らかにしています。本展の “支配“ ということにも関わってくるテーマなので貼っておきます👇
TEDのページには日本語の transcript もあります👇
ここでは人工的に赤い色にアレルギーを起こすヘルメットが登場します。
彼女がなぜ赤い色を選んだのか、という理由も説明されていて (3:27〜) 、理由の一つには「政治的だから」ということがあげられています。
本展の作品《Could an Arctic Fox Give a TED Talk?》に戻ります。この丸いTEDカーペットと流氷の組み合わせが引きの構図で撮られた時にハッとしたのです。

日の丸じゃん、、、。
この記事の馬嘉豪の作品への感想で
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
国会議事堂前の整列した群衆の部分をGoogleで画像検索すると複数の ”赤を基調とした旗” の国の記事がヒットしました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
なんて書いてしまいましたが、
”赤を基調とした旗” の国ってどこを思い浮かべましたか?
日本の国旗にも赤は欠かせないんですよね、、、。
為政者による支配が強すぎる国家のことを、私は憐れんで下に見るような価値観で生きてきました。最近になって、それは本当に距離をとって憐れんで下に見ることができる問題なのだろうか、と疑問に感じています。
おすすめの展示です。ぜひ観に行ってみてください。
展示風景画像:Jiabao li トモトシ 馬嘉豪「支配のためのプラクティス」TAV GALLERY, 2025
本日のBGM
The Chemical Brothers「Block Rockin' Beats」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「お前の耳をロックする激ヤバビートをひっさげて帰ってきたぜ」を選んでみました。何が帰ってきたのか?トランプか? 大きな物語の価値観か?
いや、そんなことはいいんだ! 「THE BEACH 2025」が今から楽しみなんだ‼️
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
関連記事
コメントをお書きください