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感想 江頭誠 個展「おふとん遊泳」

 

江頭誠 個展「おふとん遊泳」

 

会 期:2025年4月4日(金) - 4月16日(水) 

時 間:平日 16時-22時 土日 13時-19時

休 廊:会期中無休

場 所:亀戸アートセンター (KAC)

展覧会URL:

https://kac.amebaownd.com/posts/56509384?categoryIds=1764028

 


 

亀戸アートセンターにて、江頭誠 個展「おふとん遊泳」を観てきました。

 

江頭誠さんの個展については昨年 (2024年) の12月にVINYL GALLERYで行われた「東京のお土産」展についても感想記事を書いており、当ブログの登場頻度が急上昇中です。

 

 

 

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高頻度でも今回の展示の感想は書きたかった、そんな理由があります。

 

 

 

(☝️の2024年12月の感想にも書きましたが) 江頭さんの作品ときいて思い浮かぶのは、

 

”ザ・おばあちゃん家の毛布” と言いたくなるような花柄毛布でさまざまなモノを表現した作品、です。

 

例えば以下👇 (※以下画像は、江頭誠 Solo Exhibition 「東京のお土産」VINYL GALLERY, 2024 より)


 

 

 

私はこれらの作品群に対して

 

“あらゆるモノのイメージが崩壊していく、そんな異化効果を感じられる”

ことや

 

「ダサい」もの = おばあちゃん家にありそうな毛布、と

「ダサい」もの = お土産屋さんにある謎の置物、とが合わさることで

「カワイイ」と なってしまう現象——マイナス × マイナス = プラス みたいなこと——に興味を持っていました。

 

 

 

そして本展のプレスリリースを読み、江頭さんの制作の動機の一端が見えたような気がしてさらに興味を持ちました。

 

 

 

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多摩美術大学在学中、実家から持ってきた花柄毛布を自室で使っていた際、友人に「ダサい」と言われたことが心に引っかかり、それをきっかけに卒業制作として大阪城をモチーフにした花柄毛布の立体作品を発表しました。

 

Kameido Art Center 江頭誠 個展「おふとん遊泳」より抜粋

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(中略) 江頭は、次第に、「毛布の作家」ではなく、毛布の「ムード」を生み出そうとしているのではないかという考えに至ります。

本展では、花柄毛布そのものから漂う「ムード」を際立たせ、作品へと昇華させる新たなアプローチを試みます。

 

Kameido Art Center 江頭誠 個展「おふとん遊泳」より抜粋

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「ダサい」と言われた花柄毛布、、、

花柄毛布から漂う「ムード」、、、

 

 

 

江頭さんは「ダサい」という概念に挑んでいるのかも。

 

 

 

「ダサい」という概念の探究は、言うなれば「萌え」の探求と構造は同じです。

 

これが「ダサさ」です、とか、これが「萌え」です、と取り出して示すのが難しいけれども、比較的簡単に他者と共有できる概念なのです。誰かが「ダサい」と言ったことはなんとなく理解できるし、「萌え」もまたなんとなくわかります。でも具体的な部分を提示しづらく、概念そのものの言語化が難しい。

 

それって、なぜ芸術作品をつくるのか、ということの本質ではないでしょうか。概念 ≒ ムードを伝えたい、という動機です。

 

通常だと芸術が目指す「ムード」は、かっこよさとか崇高とか、プラスに感じられるものが多いと思いますが、逆に「ダサさ」というマイナスのものを作品に昇華させようとする江頭さん。作家として稀有な存在であると言えそうです。

 

 

 

以下から本展「おふとん遊泳」の画像です。

 

ブログにムービーが載せられないのが残念なんですが、これ、動いてます。

 

これまた、おばあちゃんの家にありそうな首振り扇風機のような動きですが、、、

 

「東京のお土産」展での作品群のような、花柄毛布に覆われていても何の形かハッキリわかっていた作品とはちがって、得体の知れないものであるがゆえに「カワイイ」ものではなくなっています。

 

でも「ダサい」か❓ときかれれば、、、ダサくはない。むしろ不気味さが加わってかっこいいと感じました。

 

 

 

ちょっとエルデンリングのミミズ顔に似ている、、、?


 

 

 

クールです (扇風機とかけてるワケではない) 。

 

 

 

この1階の展示スペースでは他にも色々なものがうごめいています。

 

猫ちゃんが手をあげている!

 

近づくと反応してくれます。波板でぼやけているのも相まって本当に生きているみたいな。

 

他にも色々なものが動き、、、やや、不気味かも、、、

 

 

 

「ダサい」や「カワイイ」が宿っていると思っていた物体は、見せ方によって「クール」にも「不気味」にもなるんですね、、、

 

ひょっとしたら、物には「ダサい」も「カワイイ」も「クール」も「不気味」も宿ってないのかも❓

じゃあ私たちは何に対して「ダサい」「カワイイ」「クール」「不気味」って思っているんだろう❓

 

この問いこそが本展で提起されていることのような気がします。

そして、すぐには答えが出ない問い❗️

 

この問いを心に留め置きながら作品を観ていったら何か掴めるかもしれません、、、果たして⁉️

 

 

 

 

 

 

「努力」「根性」「忍耐」という重そうな言葉が重い石に彫られているのかと思いきや、軽いスタイロフォームに彫られている、、、

 

 

 

軽石のもあります。

 

「重そうな言葉を石のような物に彫って重々しく扱っているけれどもそれってほんとに重いの❓」という懐疑の声が聞こえてくるようです。

 

 

 

かっこいいなぁ。

 

「かっこいい」のか「ダサい」のかの境は、懐疑ということにあるのかもしれません。

「ダサい」という概念は物に宿っているのではなくて、受け取る側が思考停止気味に "花柄毛布=ダサい" って思っちゃうことがダサいのかも。

 

翻って「これって本当にダサいのか」「これって本当に重いのか」と疑いを抱くことはかっこいいのでしょうか❓

 

 

 

 

重い/軽いのように相反する概念の混合は思考停止を阻止する効果があると思います。

 

そして、艶消し/ツヤツヤ、柔らかい/硬いという概念の混合とも言えるような《石》シリーズもあります。

 

 

 

すべてにおいて鑑賞時に私は思考停止してないのかと問われると自信はありません。が、総じて作品は「かっこいい」と感じました。「ダサさ」は微塵も感じられない。

 

 

で、、、

私たちは何に対して「ダサい」「カワイイ」「クール」「不気味」って思っているんだろう❓という問いですが

 

、、、やはり答えはでませんでした‼️

でも思考停止は良くないことはわかるので、普段何気なく「ダサい」と思ってしまっているものも「本当にダサいのか❓」と立ち止まって考えてみるのは有意義そうです。

 

 

 

会場ではZINE の販売や、亀戸アートセンターでお馴染みのガチャガチャ、シルクスクリーンプリントも実施されています (シルクスクリーンプリントについて詳しくは→https://kac.amebaownd.com/posts/56509384?categoryIds=1764028)。

 

 

 

変に頭を使って鑑賞しなくても、多くの人が「ダサいどころかかっこいい」と感じることでしょう。

ぜひ足を運んでみてください。

 


 

 

 

 

展示風景画像:江頭誠 個展「おふとん遊泳」亀戸アートセンター, 2025


本日のBGM

 

水曜日のカンパネラ「一寸法師」

 

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今回もBGMの選出が難しい、、、

水曜日のカンパネラは馴染みのある題材に現代の解釈を加えて価値観をUPDATEしてくれるように思うから「ダサい」と思ってたものが「クール」に変わったりする (?) ってことで選んでみました。ユーモアもあるし。🎵重くてヘビーはダメダメNO, NO!

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